UAのカバー・アルバム『KABA』

今年デビュー15周年を迎えたUAが、初のカバー・アルバム『KABA』を発表しました。アルバムタイトルや、UAの大好きな漫画家くらもちふさこが描き下ろしたCDジャケットからわかるように、UAらしいユーモアたっぷりの1枚に仕上がっています。1972年生まれのUAが、彼女が生まれる前のヒット曲から商品化される前の知られざる珠玉のナンバーまで、UAならではの選曲、サウンドデザイン、歌いっぷりで楽しませてくれる内容です。

0624music_1new.jpgくらもちふさこ先生描き下ろしのジャケット。UA の顔でも、特に眉の辺りが似ている気が。ブックレットには漫画が挿入されているそう。

1曲目はピンク・レディーのヒット曲「モンスター」(1978年)。小さい頃から歌詞がお気に入りだったそうですが、ここでは涼やかなジャジーな楽曲に仕上げています。他にも邦楽ではベースとピアノの単音だけのゾクゾクするようなトーンで始まる、薬師丸ひろ子の「セーラー服と機関銃」(1981年)や、昨年のフジロックフェスティバルの"忌野清志郎トリビュート"で共演した甲本ヒロトとのデュエットで展開するHISの「夜空の誓い」(1991年)。また、アニメ好きのUAは、『どろろんえんまくん』のエンディングテーマ「妖怪にご用心」(1973年)を選曲し、ホーン隊を交えたバンド演奏で、ユーモラスに歌っています。当時は中山千夏が歌っていたんですよね。

0624music_2.JPGカメラに向かって、茶目っ気たっぷりのUA。デビュー当時からその表情もキャラも変わりません。

洋楽では、フィオナ・アップルの「ペーパー・バッグ」(1999年)をCOMBOPIANO (渡邊琢磨×内橋和人×千住宗臣)との共演で再構築し、ビョークの「ハイパーバラッド」(1996年)は内橋和人がダクソフォンという楽器の音色を90チャンネル重ねて完成させた超ユニークなサウンドをバックにして、軽やかに歌います。他にも、鎮魂歌だからと、天に捧げる意でウクレレを軸にしたハワイアン風サウンドでまとめたレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「アンダー・ザ・ブリッジ」(1991年)や、レディオヘッドの「ノー・サプライゼス」(1997年)といった、洋楽ファンは誰もが知っている名曲を、心を洗うかのようなサウンドと歌で聴かせてくれます。

0624music_3.JPG最も影響を受けた洋楽の女性アーティストはビョークだそう。

さらに、笠置シズ子の「買い物ブギ」(1950年)、「蘇州夜曲」、アレサ・フランクリンの「デイ・ドリーミング」(1972年)、UAが第2子を出産後に聴いて何度も涙を流してしまったという、七尾旅人の珠玉の曲「わたしの赤ちゃん」(未CD化)などを丁寧に収録。全15曲どれもたっぷりと時代もジャンルも超えて耳を傾けることのできる、味のあるカバー・アルバムになっています。

0624music_4.JPGライヴも定評のあるUA。今後も唯一無二の存在の活躍を期待したいです。

レコーディングはほぼどの曲も楽器演奏と一発で録音したもので、"今"を楽しむ即興性やライヴ的な味わいも堪能することができます。歌謡曲やポップスはもちろん、童謡やアニメソング、レゲエやジャズ、ロック、クラブサウンド、ジャム・サウンド、前衛音楽、エレクトロニカ......、UAが吸収してきた音楽の量は計り知れませんが、そういったエッセンスを楽しくふりかけながら完成した曲ばかり。憩いの時間に、ぜひ聴いてみてください。くすくす笑えたり、しんみりした気分になったり、親しみのある曲をすごく身近な気持ちで聴くことのできる素敵なアルバムだと思います。

*to be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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