【虹の刻 第13章】村上虹郎×山田智和×阿部和重。

虹の刻 2020.01.23

フィガロ本誌3月号より始まった新連載「虹の刻」は、俳優の村上虹郎と映像作家の山田智和、そして各回ごとに変わる文筆家と音楽家を招き、”とある瞬間”を表現する連載企画。

第13回目の文筆家には、小説家で映画評論家の阿部和重が登場。音楽は、DYGLでギターを務める下中洋介が担当。時代を遡ったかのような風情の残る街、川越。4者がそれぞれの表現で描き出す「耳よりなお知らせ」の話。

腰に巻いたジャケット¥398,000、トップ¥105,000、パンツ¥110,000/以上ハイダー アッカーマン(三喜商事)

 

耳よりなお知らせ 阿部和重

 ひとに疑いを抱かせる最たるものは言葉だ。この指摘に異論を持つ者が世界にどれだけ存在するかはわからない。多いはずだという前提で進める。言葉は意味とセットだが、両者の結びつきは極めてゆるく心もとないものであり、時とともに変形したり使用者によって差が出てしまったりもする程度の不安定なつながりにすぎない。したがって言葉は疑わしく、その主体がだれであれ発言も記述も基本的には眉に唾をつけて受けとめざるをえない。

200106-nijinokoku-03.jpg

 個人間の手紙ひとつとってもまったく信用ならない。典型的なスパムメールの手口として、「あなただけ」に向けたメッセージを不特定多数に送るというのがあるが、その影響が拡大した結果、似たような文章が綴られたメールはすべてファクトチェックせざるをえない時代が到来してしまった。「ぜひあなたに」だの「あなたしかいない」だのといった言葉を重ねれば重ねるほど、読み手の疑念を深めることにしかならない残念な時代だ

200106-nijinokoku-04.jpg

 おかげで仕事の依頼すら疑ってかからざるをえない。これは本当におれ宛に送信された依頼状か? たとえばそこに一箇所でも別人の名が書かれていたりするともう駄目だ。あとは脳裏で疑惑が渦まくばかりである。

_MG_0431.jpg

_MG_0432.jpg

監督・山田智和
Tomokazu Yamada


1987年生まれ、東京都出身。Caviar所属。アーティストへの敬意、作品や精神性への共感と愛。光や闇、水などの自然を巧みに取り入れた作品群は、普遍性を持ちつつ私的な感情を描き出す。2018年、米津玄師「Lemon」のMVでMTV VMAJ 2018 最優秀ビデオ賞受賞、19年、スペースシャワーミュージックアワードでBEST VIDEO DIRECTOR受賞。
俳優・村上虹郎
Nijiro Murakami


1997年生まれ、東京都出身。2014年、カンヌ国際映画祭出品作『2つ目の窓』で主演を務め、俳優デビュー。作品の持つ時代性や自身の内的な記憶と真摯に向き合い、繊細な感情を映し出す演技派。2020年には映画『ソワレ』の公開が控える。2月1日より始まる初ミュージカル作品『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2に向けてただいま絶賛稽古中。
文・阿部和重
Kazushige Abe


1968年生まれ、山形県出身。日本映画学校卒業。94年、「アメリカの夜」(講談社刊)で第37回群像新人文学賞を受賞しデビュー。その後、2005年「グランド・フィナーレ」(講談社刊)で第132回芥川賞、10年『ピストルズ』(講談社刊)で第46回谷崎潤一郎賞を受賞。19年9月、『Orga(ni)sm / オーガ(ニ)ズム』(文藝春秋刊)が発売。
音楽・下中洋介
Yosuke Shimonaka


1992年生まれ、神奈川県出身。2012年、秋山信樹(Gt. & Vo.)、加地洋太郎(Ba.)、嘉本康平(Dr.)とともにバンドDYGLを結成。自身はギターを担当。16年、初のEP『Don't Know Where It Is』を発売。17年、ファーストフルアルバム『Say Goodbye to Memory Den』を発売、フジロックフェスティバル'17に初出場。19年、アルバム『Songs of Innocence & Experience』を発表し、日本から始まりアメリカ、アジアを周るツアーを開催。
https://dayglotheband.com/

 

●問い合わせ先:
三喜商事
tel:03-3470-3948

※この記事に記載している価格は、標準税率10%の税込価格です。

réalisation : TOMOKAZU YAMADA, direction de la photographie et montage : YUKI SHIRATORI, musique : YOSUKE SHIMONAKA(DYGL) , acteur : NIJIRO MURAKAMI, texte : KAZUSHIGE ABE, stylisme : KANAKO SUGIURA, coiffure et maquillage : TAKAI

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Recommended

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories