私達はそれでいいのよ、
私達はそれでいいのよ、といつも言ってた。
おとこのて
私達は意味もなく、サーフィンの映画を観ることにはまっていた。爽やかな若い男の子とブロンドの女の子のお話。だいたい、後半に2人でプールか、海の中に入る。海の映画は青くて透き通っていて波の勢いが気持ちよくて映画を観終わる頃には2人でサーファーの気分になった。実際の私達はサーファーからは程遠いほど、お互いに青白い肌をしている。
いつまでも私は小麦肌の女の子に憧れているし、
あなたが小麦肌の女の子を街中で見ているのも私はこっそり知っていた。可愛いよね、小麦肌って。
私達が映画を観終わる時間帯は朝の4時手前。
そこから十分に寝たとして起きるのは午後2時から3時だった。
起きた瞬間にお腹は空いているし、
朝ご飯なのか昼ご飯なのか夜ご飯なのか
これが何ご飯か分からない。
それでも私はこういう日常が愛おしく
冷凍していた焼き鮭を焼いた。
そして午後3時「おはようございまぁーす」と2人で手を合わし、食べ終わる頃には夕方になっていた。
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朝の8時、普通の、ごく普通の規則正しい朝ご飯。私はあの頃からずっとはまっている冷凍の焼き鮭を食べながらあの日々を思い出した。
あの頃、誰になんて言われたところで
ずっとそばに居たかった。
変わることなんて当たり前で
変わることになんて恐れないでほしかった。
お互いに
そう思えていると確信していたとしても
やっぱりお互いはお互いでしかなく、
2人は1人にはなれなかった。
どちらかが寂しくて
どちらかは愛おしかった。
そしてどちらもどうしようもなく愛していたんだ。
それだけは明確だったとは思う。
でもあの頃の私達は
それでいいのよ、と言いながら
それではよくないということに
恐れていたんだ。
私達はそれでいいのよ。
私達はそれでいいのよ、といつも言ってた。
おとこのて

モデルとしてメディアで活躍する一方、彼女の中から生まれる独自の言葉を作品にし、詩集やエッセイ、写真、音楽、ジュエリーなど、形を変えて“表現”の幅を広げている。@loveli_official