驚くほどクラシック。5つ星のプチ・ホテルが目に新鮮。
PARIS DECO 2017.01.18
パリの新しいプチ・ホテルの内装は、デザイン家具、モチーフの壁紙、色の壁、アート作品でまとめられていることが最近の傾向だ。そうした流行りの要素から超越し、 昔ながらの高級ホテルのイメージでまとめられたホテルがオープンした。その名もオテル・スプレンディッド・ロワイヤル・パリ!
ホテルができたのは8区のフォーブル・サントノーレ通りとガブリエル通りを結ぶシルク通りで、控えめな道だ。ここは19世紀後半から20世紀頭にかけてブルジョワたちがこぞって邸宅を建てた通りである。このホテルは1897年の建物。最近までは近くにブティックを構えるピエール・カルダンが所有していたという。そうしたパリの記憶を大切に、ハイ・クオリティと洗練を凝縮し、ホテルは昨年後半にひっそりと誕生した。


左:フォーブル・サントノーレ通りにぶつかる、ひっそりとしたシルク通りに建つホテル。 6階のスイートのテラスからエッフェル塔が眺められる。
右:エントランスのレセプション。
12室のスイートしかないミニ・ホテルなので、1階には無粋で厳しいフロントなどない。自分の家に帰ってきた、という感覚のホテルだ。ルームサービスも24時間いつでもオーダーできるので、自宅で過ごすように滞在できる。このホテルはチェーンに属してはいず、個人経営である。オーナーはナポリ出身のロベルト・ナルディ。ホテル経営を家業とする家の三代目で、ロベルト・ナルディ・コレクションという名前ですでにローマに5つ星ホテルを3軒、ルガーノに2軒持っている。


左:1階のホール。
右:朝食のサービス。ジャムはマルティール通りで人気のla Chambre aux confitures の創業者リーズ・ビアンエメ製、フルーツ・ジュースはパトリック・フォン製、と厳選されたセレクションを楽しめる。
何もかもがハイレベル。室内は目に優しい淡い色調で整えられ、そこに厚みのあるふかふかした絨毯、イタリアのアルチザンが作ったクラシックな家具を配置している。寝具は肌に気持ちの良いコットンサテン、ベッドサイドに置かれるミネラル・ウォーターは、ピュアでまろやかなAcqua Filette(アクア・フィレッテ)、バスルームのアメニティはといえば、世界のセレブたちのパフューマーとして名高いフローレンスのLorenzo Villoresi(ロレンツォ・ヴィロレジ)……。価格も価格なので、パリで特別な夜を過ごしたい時に、おすすめのホテルだ。
1階にもうじきイタリアン・レストランができる。料理を指揮するのは「ラ・ポスタ・ヴェッキア」「イル・ペリカーノ」の星付きシェフのミケリーノ・ジオイアで、宿泊客でなくてもレストランとして利用できる。本格的なイタリア料理に恵まれないパリで、これは朗報では?


スイートParisの客室とバスルーム。


スイートElyséeの客室とバスルーム。 ジュニアスイート(45平米)1,050ユーロ〜、シニアスイート(65平米)1,350ユーロ〜、スイート・アパルトメント(110平米)2,300ユーロ〜
photos:Emanuele Di Pasquale
パリ支局長 東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。