パリ北駅の近くにできた4つ星ホテルは、汽車旅がテーマ。
PARIS DECO 2017.06.30
パリ北駅から2分の場所にオープンしたHotel Whistler(ホイッスラー)。価格は低く、なんだか美しくないという駅前ホテルの定番イメージを、見事に覆すデザインホテルなのだ。ベルギー、オランダへと向かう汽車、そしてロンドンへのユーロスターの発着駅である北駅に近いということは、早朝の列車でパリから旅をするときや、夜遅くにパリについたときに大きな威力を発揮するはず。 地下にはハマムもあることだし! そして、サン・マルタン運河やクリニャンクールの蚤の市といったパリで今気になる場所の観光にも便利な立地なので、シンプルなパリ滞在のときにも悪くないホテルといえる。


外観からはわからないが、ドアをあけるや汽車旅の世界が広がるホテルだ。1室129ユーロ〜。ホテルの名前は、汽車の出発を告げる笛のホイッスルからきている。
室内のディテール。ベッドの上に、まるで汽車のコンパートメントのような棚が設けられた部屋もある。
閉じるとステッカーが貼られたトランクのように見える、折りたたみ式のデスクが各部屋に。
ホテルの内装を過去にいくつも手がけているサンドリーヌ・アルーフは、駅に近いこのホテルでは、オリエント・エクスプレスにみられるような古き良き時代の汽車の旅にインスパイアされたインテリアの遊びを楽しんだ。室内の家具からちょっとしたディテールまで、何もかもが旅がらみ。ホテルの入り口から駅長の帽子を被ったレセプショニストが座るフロントまでの通路は、乗客たちのトランクが並べられている汽車の乗降口さながら。ここから早くもホテル内旅行が始まるのだ。客室のある6フロアはパリ-ブダペスト、パリ-ベルリン、パリ-ロンドン、パリ-ヴェニス、パリ-ミュンヘンと命名され、インテリアのキーカラーがそれぞれ異なっている。オネスティーバーを兼ねた1階の朝食ルームに至っては、まるで列車の食堂車にいるような錯覚が……。ここに設置されたモニター画面で北駅発の列車のホームの番号や遅延情報などが駅同様に得られるのは、気の利いたサービスだ。
プラム色、煉瓦色、オレンジ……フロアによって室内の色が変わる。パリ-ロンドンのフロアの部屋は英国らしくグリーンだ。部屋はRoomではなく汽車旅のようにCabineとこのホテルでは表示。
12〜30平米の全31室のホテル。バスルームはパリのメトロでおなじみの白いタイルで覆われた、シンプルなアールデコ・スタイル。アメニティはHistoires de Parfumsの「1828 ジュール ヴェルヌ」と、どこまでも旅の世界に拘る。
ロビー階のバー。列車の食堂車のような木製テーブル、真鍮のランプシェード……。
内装を担当したサンドリーヌが探し集めた古いトランクが通路の棚に並ぶ。昔の持ち主の名前がかかれたネームプレートがついたままのものもある。


ロビーからトイレまで、ホテル内の旅は続く。
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。