広告ファンをうならせるシャルル・ルーポのポスター展!

PARIS DECO 2018.02.23

名前を知らなくても、あ、このポスターなら知っている、となるシャルル・ルーポ(1892〜1962)。ワイン好きならNicolasのための広告だろうし、美容に興味のある人は赤い唇が印象的なCotyのポスターだろうか。ルーポによるとてもグラフィックな広告ビジュアルの数々。5月26日まで、パリのグラフィック・アートの図書館であるフォルネ図書館において『ルーポ、広告における絵画』展が開催されている。さほど規模は大きくないが、入場無料でこれだけ見られるのは幸運!という展覧会だ。

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フォルネ図書館と展覧会のメイン・ビジュアル。なお、展覧会の入り口はこの建物の表側にある。建物のサンス館は15世紀末の建築物。

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20年代の代表的スタイルを指すのに使われるアール・デコという言葉が生まれるきっかけとなった有名な1925年のアール・デコ展。そのメインポスターがルーポに託された。

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年配の男女が懐かしそうに広告を眺める、食前酒St.Raphaelの部屋。日本だと、トリスウイスキーのアンクルトリスの広告を懐かしむ、という感じだろうか。

有名なカッサンドルやコラン同様、20年代のアール・デコの時代に大活躍をしたグラフィック・デザイナーのルーポなしには、20世紀のフランスの広告は語れない。会場を巡る年配の来場者たちは、展示のポスターを見て懐かしそうに昔話に花を咲かせる。そして、グラフィックを学んでいるらしい学生たちは、ルーポの仕事のモダニティに感服の様子である。

ニースに生まれ、リヨンのボ・ザール校で学んだシャルル・ルーポ。第一次大戦に参加し、その時の怪我ゆえに滞在することになったスイスでイラストや広告の仕事をスタートする。このスイス時代から晩年まで約50年間に彼が手がけたポスターが、会場には時代順に展示されている。ルーポが他の広告アーティストと違って、ひとつのスタイルにとどまることなく進化し続けたことを見せるためだ。宣伝する商品そのものではなく雰囲気に重点を置いたポスター、余白を生かした大胆な構図、彼が手書きしたブランド名や商品名……時代変われど、ルーポが求め続けた斬新さに圧倒させられる。

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ルーポのデビュー当時の作品から展示はスタート。1914〜1923年のスイス時代、毛皮、化粧品、たばこといった贅沢品のポスターがメインだった。

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1923年、車のVoisinのためのポスターはその斬新さゆえ話題を呼んだ。©Bibliothèque Forney

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パリ時代。ワインのEtienne Nicolas、家具のLes Galeries Barbèsなどを展示。この右手には、1924年にルーポが手がけたボン・マルシェのおもちゃの広告ポスターも見ることができる。

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1930年代はルーポの活躍がめざましい時代だ。右端のCotyは1938年の名作。写真左手に見られるように、1930年にルーポはカッサンドルと共同でエージェンシーl’Alliance graphiqueを設立するが、うまくいかずに1934年に終了。その間もルーポは1927年から仕事を始めていたロレアルの前身Eugène Schuellerの持つさまざまなブランドのための仕事を個人として続けていた。

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1934年から手がけていたEugène SchuellerのペンキのブランドValentineのポスターやAmbre Solaireのポスターは見応え十分。向かい合わせに展示されている。

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1930年のトワイニングの紅茶のポスター。大胆なTのあしらいがスタイリッシュだ。リヨンのMusée de l’Imprimerie et de la communication graphique が所蔵。このポスターに限らず、ルーポの仕事を見るときはレタリングにも注目を。

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ルーポが新バージョンをデザインしたワインのチェーン店Nicolasの配達員キャラクターNectarや、彼がデザインしたリキュールSt. Raphaelのロゴはポスター以外の媒体にも活用された。Nicolasの仕事は1927年に始まり、戦後まで続いた。また、St.Raphaelとは1937年の世界万博の際にポスターを依頼されたのがきっかけで、戦後のルーポはさらに大胆なビジュアルを提案したそうだ。

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戦後、広告業界が活気を取り戻すのは1960年代に入ってから。ルーポのデザインはよりシンプルに。1962年のL’Air liquideのロゴは、そのモダニティゆえ2017年まで使われていた。©Collection J.Loupot

『Loupe, le peintre en affiche』展
会期:開催中〜2018年5月26日
会場:Bibliothèque Forney
1, rue du Figuier
75004 Paris
tel:01 42 78 14 60
開)13:00~19:00
休)日・月、3月31日、5月1日、8日、10日、19日
入場無料
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。
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