パリの我が家は11区のニュー・ホテル・ル・ヴォルテール。
PARIS DECO 2019.02.18
ニュー・ホテル・ル・ヴォルテールの最寄駅はVoltaire(ヴォルテール)。小さなビストロやバー巡りが楽しめるオーベルカンフ通りやサン・モール通りに出向くのに、便利な立地である。
47室の4つ星ホテルで、オーナーのジョルジュ・アントゥンはマルセイユとパリに持つ合計10のホテルをふたりの娘キャロリーヌとカミーユとともに経営している。内装のアーティスティック・ディレクションを担当したのは次女のカミーユ。“4つ星ホテルのサービスとコンフォート、Airbnbのようにアパルトマン気分を”と、彼女は自宅のインテリアを手がける感覚で居心地のよい空間を作り上げた。
お帰りなさい!という感じに迎えてくれる、モダンでアットホームなホテル。エメラルドグリーンの外観が目印だ。photo:Hervé Goluza
アントゥン姉妹。左が姉のキャロリーヌで経営部門を担当。右のカミーユがホテルのADを務める。photo:Hervé Goluza
たとえば、1階の広々としたロビーホール。掘り出した70年代のヴィンテージの家具で、家庭的な雰囲気を演出している。テラゾの床に真鍮素材の線が長方形を描くのは、カーペットをイメージして、というモダンタッチも。ホテルがあるのは、かつて多くの職人たちがアトリエを構えていた界隈。そんな街の歴史へのオマージュから、メタルや木材、テラゾといったラフな素材をインテリアに使用することにしたという。
ロビー・ホール。真鍮のラインが囲んだ長方形がカーペットを感じさせる。photo:Mariko OMURA
カミーユが楽しみながら掘り出したDe Setaのソファ、シャルロット・ペリアンのランプ……。photo:Hervé Goluza
寛ぎを感じさせる素材でまとめられたロビー。photo:Hervé Goluza
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さらに3名のアルチザン・アーティストの友達に、彼女は声をかけてコラボレーションを行った。バスルームを飾るマリオン・デュクロ・メランデルールによる丸い鏡。壁紙、絨毯などホテルの改修工事時の廃材を用い、歴史を鏡にプラスしているのが特徴である。コスティアはマットな真鍮のラインを組み込んだ木製の小型丸テーブルをデザインした。狭い客室向けのスチールと木のベッドサイドテーブルをデザインしたのは、ピエール=ルイ・ジェルリエ。こうした手作業も感じさせるコンテンポラリーな家具類が、ホテルの客室の個性をなしている。
カレー・イエローの部屋。照明、デスクを組み込んだサイドテーブルはピエール=ルイ・ジュルリエがこのホテルのためにデザインした。photo:Hervé Goluza
ヴェロネーゼ・グリーンの部屋。photo:Hervé Goluza
白いタイルとインダストリアルなガラスの扉がシンプルで感じの良いバスルーム。アメニティグッズはNuxeだ。改装工事現場で回収した昔のホテルの壁紙などをあしらった丸鏡は、マリオン・デュクロ・メランデルールによる。
客室の色は4色。カミーユが選んだのはマルサラ・レッド、カレー・イエロー、ヴェロネーゼ・グリーンそしてアイス・ブルーだ。どの色もとてもエレガント。昨夏のオープン以来、リピーター客が徐々に増えていて、“次は何色の部屋を希望しようか”と楽しみしている人もいるという。新しくオープンするホテルの多くが、写真やアート作品で壁を飾る傾向があるが、ル・ヴォルテールでは壁は壁のまま。
「ドアノブは陶製、スイッチはベークライト、真鍮のランプ……というように、綺麗なディテールで客室は満たされているのだから、それ以上の装飾は不要でしょ」とカミーユ。
アイス・ブルーの部屋。ベッドの両サイドに置かれている丸テーブルは、コスティアのデザイン。photo Hervé Goluza
マルサラ・レッドの部屋。photo:Hervé Goluza
地下の朝食室は7時から12時まで、というゆったりとした時間帯がありがたい。朝食の後、出発前にちょっとカフェを一杯!という利用も可能。このサービスで、まさに自宅にいるような気になれる。地下1階だが、オープンエアのテラス席も設けられている。
次のパリ滞在が決まったら、真っ先に予約を入れたいホテルの登場では?
クオリティの良い健康的な朝食が7時から12時まで取れる。photo:Hervé Goluza
テラス席。春が待ち遠しい!! photo:Hervé Goluza
réalisation:MARIKO OMURA