モンパルナスのシャルティエ、驚きのアール・ヌーヴォー。
PARIS DECO 2019.03.08
9区で観光客に絶大な人気を誇るシャルティエ。予約を受け付けないので、時に長い行列が店の前にできている。庶民的な雰囲気と手頃な価格から、ここはレストランというより食堂と呼ぶのがふさわしい。正しい名前は“ブイヨン・シャルティエ”といって、オープンしたのは1896年である。時間をかけてじっくり煮込んだ安い肉のブイヨンを貧しい労働者たちのために、とシャルティエ兄弟が開いたのだ。
2月にオープンしたモンパルナスのブイヨン・シャルティエ。こちらの店内はアール・ヌーヴォー自慢だ。
ブイヨン・シャルティエ・モンパルナスに入るや、こんな光景。パリ滞在中、一度は味わいたいのがこの雰囲気では?
1903年、兄弟はモンパルナスにも“ブイヨン・シャルティエ”を開いた。こちらの店内はその時代を席巻していたアール・ヌーヴォーでまとめられ、安食堂にしては仰天する美しさだった。あいにく1924年以降、複数の人々の手に渡ることに。それが2019年2月、この店の創業当時と同じBouillon Chartier Montparnasse(ブイヨン・シャルティエ・モンパルナス)として蘇ったのだ。というのも、2007年に9区のブイヨン・シャルティエのオーナーとなったジュィー一家がこの場所の持ち主となったからである。1903年に作り上げられた内装は美しく修復され、かつ、それとまったく同じアール・ヌーヴォー内装で店の奥のスペースも改装された。
アール・ヌーヴォーの内装を飾るルイ・トレズルによるタイル。
ガラスの天井、丸いブラッスリー・ランプ……。
ブイヨン・シャルティエ・モンパルナスとして蘇った店内は、1984年に歴史記念物に指定されている。
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前菜は野菜のポタージュ(1ユーロ)、メインはフランクフルト・ソーセージのフライドポテト添え(6.50ユーロ)がいちばん安い。ワインにしても、カラフのワイン(25cl)が2.70ユーロからと気軽に昼からオーダーしたくなる価格だ。注文の品を担当ボーイがテーブルを覆う紙のクロスにボールペンで記入してゆくのは、9区のシャルティエ同様である。料理は次から次へとサービスされるので、つい食事に夢中に。右を向いても、左を向いても、上を見上げてもアール・ヌーヴォーのこの内装をじっくり眺めるのも忘れてしまいそう。
毎日プリントされるお品書き。前菜、メイン、デザートの提案セットメニューは日替わりで、15.60ユーロのこともあれば、17ユーロのこともある。
ゆで卵のマヨネーズがけ(2ユーロ)はブラッスリーの定番前菜だ。
カラフもパンのパニエもとてもラフ。紙のテーブルクロスにオーダーが次々とメモされてゆく。
180席ある巨大なスペースながら、時間によっては満席となる。
59, boulevard du Montparnasse
75006 Paris
営)11:30〜24:00
無休
www.bouillon-chartier.com/en
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。