地下からクーポールまで。プランタンの舞台裏ツアー。
PARIS DECO 2019.05.17
デパートのギャラリー・ラファイエットではクーポール(丸屋根)の下の吹き抜けに、網の小屋を宙づり。空中散策を楽しみながら、クーポールを下から眺めることができるというFUNAREA(フュナレア)を無料開催している。これはアクセスが3階からで、4階では宙に浮くガラスの箱の中を歩くGLASSWALK(グラスウォーク)体験 。新しいデパートの楽しみ方として画期的な提案だが、どちらも5月26日で終わってしまうというのが残念だ。
5月26日まで無料開催のフュナレアとグラスウォーク。前者は黄色い通路を渡るときも、スリリングだ。
ギャラリー・ラファイエットの並びのプランタン・デパートは、今年の2月から歴史と建築をめぐる舞台裏ツアーを提案している。これは年末まで開催の予定とか。予約が必要で有料(大人13.50ユーロ、子供9ユーロ)だが、ガイドとともにデパートの非公開の場所を含めた10カ所を探検できる。所要時間は1時間30分で、1回のグループは最大25名。
プランタン・デパートでおなじみの丸屋根。©Printemps Haussmann
集合地は1階。その後、最上階に上がり素晴らしい眺望がツアーのスタートだ。©Printemps Haussmann
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このツアーで語られるのは、1865年に創業したデパートの物語、歴史、建築史、文化的背景など。時間軸でツアーは進行する。創業時の建物は現在のメンズ+グルメ館なので、この屋上からスタート。最近、ここにペリュッシュというバー・レストランがオープンし、眺めの良いテラスで評判だ。エッフェル塔、オペラ座、マドレーヌ寺院……ツアー参加者たちはこの眺望を屋上の特別なスペースで楽しみながら、ガイドが語るデパートの歴史に耳を傾ける。建築的にも語るべきことが多い建物。屋上の次は地上階に下りて、通りの外から建物の見学だ。自然、フラワーバスケットなど、いまも館内で目にとめることができるモチーフの由来も明かされる。
創業者ジュール・ジャリュゾ。ボン・マルシェのシルク売り場で働いていたときに知り合ったコメディー・フランセーズの若い女優と結婚し、自分たちのデパートを持つことを決める。1年の工事でプランタン・デパートを1865年にオープン。©Printemps Haussmann
1975年に歴史建造物に指定された最初の建物(現在のメンズ・グルメ館)。1865年のオープン当時、売り場は3フロアを占め、残りのフロアに従業員、そしてジャルゾ夫妻が暮らしていた。なお1881年に火事があり、再建は建築家のポール・セディーユに任された。©Printemps Haussmann
現在も建築当時同様、外に四季のアレゴリーが眺められる。左から、秋、夏、春、冬の順だ。
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デパートのふたつめの建物は、現在のモード館である。その建築が始まるのは、創業者ジュール・ジャリュゾから彼のセカンドだったギュスターヴ・ラギオニに経営が代わってからで、1907年から工事が始まり、1910年に営業が開始された。
こちらの建物は地下が4フロアあり、40名の技術者たちが常駐。鏡、木工、鍵……デパート内で何かあっても、彼らがいるのですぐに対応できる。これはフランスのデパートではとてもユニークなことだそうだ。このツアーでは買い物客は立ち入り禁止の地下に下り、彼らの作業場を見ることができる。建築面でガラスと鉄をいち早く取り入れただけでなく、館内の照明をガスから電気に切り替え、エレベーターを設置して、といかにプランタン・デパートが革新的であるかもツアー中に学びながら、ロトンド、アトリウムなどを見学。館内を上にあがり、締め括りは1910年にガラス職人ブリエールによってクリエートされた美しいクーポール見学である。ブラッスリーから誰でも眺められるクーポールだが、秘密がいっぱい隠された裏側の見学ができるのはツアーならではの特権!
プランタン・デパートの年間来訪者数はルーヴル美術館をはるかに上回り、第1号館は1975年に歴史建造物に指定されていて……このツアーは消費の殿堂であるデパートを、別の視点で見学する絶好のチャンスだ。
1910年にできた2号館(現在のモード館)。床と階段の花かごの装飾は今も健在だ。©Printemps Haussmann
コーマルタン通り側のロトンド。
いまは従業員専用のスペースだが、その中には軽やかでエレガントな階段が。©Printemps Haussmann
ナンバリングされた3181枚のステンドグラスのパネルからなるクーポール。戦争中は、パネルを剥がし、別の場所で保管していたそうだ。
建物内で目にできるのはステンドグラスのクーポールだが、その外側にさらにガラスのクーポールがある。その秘密もこのガイドツアーで見学が可能。
予約サイト(ガイドは英語かフランス語を選べる。グループの場合、日本語が可能。問い合わせ先contact@cultival.fr。)
www.cultival.fr/en/visites/printemps-department-store-secrets-backstage
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。