パリの画廊で、黒の女王ルイーズ・ネヴェルソン展2つ。

PARIS DECO 2021.07.07

9月からポンピドゥー・センターでジョージア・オキーフ展が開催される。アメリカで20世紀に活躍した女性アーティストといったら、筆頭に上がるのが彼女だろう。オキーフとほぼ同時期、アメリカで彫刻家として活動していたLouise Nevelson(ルイーズ・ネヴェルソン/1899〜1988年)がいる。その彼女の仕事に、左岸のコンテンポラリーアート・ギャラリーのGalerie Kamel Mennourが2つの会場でスポットを当てている。

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現代彫刻のパイオニアと称されるルイーズ・ネヴェルソン。ニューヨークのパーク・アベニューにも、彼女の作品が設置されている。写真は『Louise Nevelson, solo exibition』より。©︎ADAGP Louise Nevelson, photo.archives Kamel Mennour

これほどまとまって彼女の作品が見られるのは、パリでも珍しいという。日本ではあまり紹介される機会がないかもしれないが、いまから30年くらい前、コム デ ギャルソンの伝説の雑誌「SIX」のカバーを彼女は飾っている。目の周囲を真っ黒に隈取りし、黒いタバコを口にくわえてレンズに目を向ける顔が迫力に満ちていた。現代彫刻の扇動者とも呼ばれる彼女。ポンピドゥー・センターで現在開催中の『Women in Abstraction』展でも彼女の作品が展示されているが、ここでは一点のみだ。

キエフに生まれたルイーズ。5歳で移住したアメリカで16歳頃からアートを学び始めたものの、彼女がアーティストとして作品を世間に見せ始めるのは1950年代になってからと遅い。20代の頃はマーサ・グレアムのダンス公演などの劇場関連の造形芸術に携わり、30代前半はメキシコでフリーダ・カーロの夫ディエゴ・リベラの壁画の仕事でアシスタントを務める。その後、アメリカのアーティストの失業対策のための連邦美術計画(FAP)に参加することで国の補助金を得て、アート指導、作品の制作を続けてゆけたのだ。1950年代にニューヨークの有力な複数のアートギャラリーが、彼女の作品を展示。このおかげで、彼女の名前が知られるようになるのである。展示されたのは、ベッドや椅子など日用品の廃材を利用してコンポジションをボックス内に作り、それを真っ黒にペイントするというコンセプチュアルアート。この廃材は離婚後の貧しい子ども連れの暮らしで、暖をとるために彼女が集めたものとも……。

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左は『Louise Neveloson,solo exibition』、右は『Alicja Kwade, Louise Nevelson – Face-à-face』で展示されているネヴェルソンの作品。photos:Mariko Omura

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セーヌ河に近い、ポン・ドゥ・ロディ通りのカメル・メヌールの画廊で開催しているのは彼女のソロエキジビションである。版画、絵画も手がけた彼女。裏手の小さな部屋ではコラージュが数点壁にかけられているが、ここでは黒の作品が展示のメインだ。一方、サン・タンドレ・デ・ザール通りにある画廊では、彼女とアリシア・クァッドというふたりの女性アーティストの作品の展示を行っている。メヌールがクァッドに1970年代のネヴェルソンの作品に呼応する作品の制作を依頼し、クァッドの過去の作品も含めこちらのスペースで両者を並列展示しているのだ。ネヴェルソンがウクライナからアメリカに移住したように、1979年生まれのクァッドも祖国ポーランドからドイツへ移住したアーティストだ。そして日常生活の中のものを作品に使用し、ミステリアスな作品を制作……共通点を持つふたりの作品が会場で対話する。この機会にふたりの仕事を発見しにいってみよう。

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アリシア・クァッド(左)とルイーズ・ネヴェルソン。©︎Alicia Kwade  ©︎ADAGP Louise Nevelson. Photo.Christian Werner; Michiko Matsumoto

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Alicja Kwade, Louise Nevelson – Face-à-face』より。©︎Alicia Kwade ©︎ADAGP Louise Nevelson. Photos.archives kamel mennour

『Louise Nevelson, solo exhibition』
会期:開催中〜2021年7月24日(延長の可能性あり)
Galerie Kamel Mennour
5, rue du Pont de Lodi
75006 Paris
『Alicja Kwade, Louise Nevelson – Face-à-face』展
会期:開催中〜2021年7月24日(延長の可能性あり)
Galerie Kamel Mennour
47, rue Saint-André-des-Arts
75006 Paris

eiting:Mariko Omura

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