ロワール渓谷のシャトーで、ダ・ヴィンチの庭と絵画と建築と。
PARIS DECO 2021.08.14
次のパリ滞在。せっかくフランスまで来たのだから、少し足を延ばして地方を観光してみるのもいいだろう。ヴェルサイユ宮殿、ジヴェルニーのモネの家と庭はすでに体験済みというのなら、ロワール地方のシャトー・デュ・クロ・リュセを訪れてみては ? 敷地内のレオナルド・ダ・ヴィンチ・パークのそぞろ歩きも楽しめることだし……。
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レオナルド・ダ・ヴィンチ終焉の地
ユネスコの世界遺産に登録されたシャトー・デュ・クロ・リュセは、ロワール古城巡りで有名なアンボワーズ城から500mの場所に位置している。15世紀に建築されたゴシック様式のシャトーで、レオナルド・ダ・ヴィンチが人生最後の3年間(1516~19年)を暮らしたことで知られている。若きフランソワ1世に招かれて、イタリアから弟子と一緒にアンボワーズにやってきた64歳のダ・ヴィンチはその際に『モナ・リザ』『聖母子と聖アンナ』『洗礼者聖ヨハネ』をイタリアから持参し、このクロ・リュセ城に暮らす間それらの仕上げを続けていた。
アンボワーズ城とは地下通路で繋がっていて、ダ・ヴィンチを崇拝する若きフランソワ1世が地下通路をたどって彼と話をしに来ていたそうだ。ダ・ヴィンチはというと、クロ・リュセ城で絵画制作だけでなく発明にも心を傾けていた。シャトー内に再現されたアトリエでは、彼が発明した片手使用のコンパスや分度器なども展示。上階では再現された彼の寝室などを見学できる。
この城はルイ11世が貴族の称号を与えた彼の料理人エティエンヌ・ル・ルーが建てたものだ。その後、シャルル8世が買い取り王家の城に。彼は王妃アンヌ・ドゥ・ブルターニュが早逝した子どもたちを嘆き悲しめる場としてチャペルを設けた。そこにはフレスコ画4点で装飾され、その中の『受胎告知』はダ・ヴィンチの弟子の手によるものという。1519年に亡くなったダ・ヴィンチが埋葬されているのが、このチャペルだ。
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新ギャラリーのプロジェクションマッピング
1855年にシャトー・デュ・クロ・リュセはサン・ブリ家の所有となり、大規模な改修工事を行ってダ・ヴィンチの城として蘇らせたのは1960年代のことだ。今年の6月25日に新たに加わったのは、画家&建築家レオナルド・ダ・ヴィンチのギャラリー。かつてテキスタイルの工場だったという建物にできたこのギャラリーの1階で見るルーヴル美術館、ウフィツィ美術館など世界各地に散らばっているダ・ヴィンチの絵画17作品を集めたイマーシブなプロジェクションマッピングがなんといっても圧巻。デッサンから絵画へと、創造の過程を見せつつ、さらにディテールを拡大して壁いっぱいに、と目をひきつけ……広々とした空間、その四方の壁と天井に次々に現れる巨匠の作品に溺れる醍醐味が待っている。この体験はギャラリー鑑賞の最後のお楽しみとして、見学は2階の展示から始めよう。建築家としてのダ・ヴィンチの仕事にフォーカスしたスペースだ。建築、技術、宗教、軍事、舞台演出の5テーマについてビデオゲームや模型などを配して、子どもの来場者が多いことから遊びながら学べるように工夫がなされている。
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レオナルド・ダ・ヴィンチ公園
シャトー見学の後は、ロワール河の支流が横切る7ヘクタールの公園へ。ここは1950年代にルネッサンス様式の庭に作り変えられ、子どもの頃から自然に親しみ、そこから多くを学んだレオナルドに捧げられている。花より樹木がメイン。専属の庭師が手入れをしているが、洗練されすぎないようにあえて自然に任せる部分も残す配慮をしているそうだ。
彼が残したスケッチをベースに作られた橋や装置などを広々としたグリーンの中、随所に配置。また彼の発明の図面も展示して……とまさに、レオナルド・ダ・ヴィンチ公園という名にふさわしい造りだ。10年前に設けられた野菜畑では、彼の祖国イタリアの野菜が栽培されている。フランスは狩猟の国だが、イタリアは野菜の国。ズッキーニやナスなどは、カトリーヌ・ドゥ・メディチがフランスにもたらしたものであることを思い出させる。公園内、彼がデザインした人が交差せずに往来できる二段橋がかかっているのは、レオナールの庭と呼ばれる一角。植物学者でもある彼が残したクロッキー帳に描かれていた花、植物、樹木などで構成され、時折霧が水面を覆うのはルネッサンス絵画に見られるボカシに近づけるための演出だという。鳥たちのさえずりに耳を傾けながらこの庭、公園を一周し、いかに彼が自然からインスパイアされたか思いをはせてみよう。
2, rue du Clos Lucé
37400 Amboise
www.vinci-closluce.com
料:17.50ユーロ(ファミリー料金、アンボワーズ城とセット料金などもある)
開)9:00~19:00(7、8月は9:00~20:00)
https://vinci-closluce.com
editing: Mariko Omura