ホテル・ニュアージュ、ふんわり雲に包まれ都会のリトリート。
PARIS DECO 2022.02.06
サントノーレ通りにも近く、シャンゼリゼ大通り界隈のホテルと聞くと、なにやらゴージャスでリッチな人向けのイメージ。昨年10月半ばにオープンしたホテル「Nuage(ニュアージュ)」はちょっと違う。ゆったりと落ち着いた時間を求めてやってくる人たちの心を満たすラグジュアリーなホテルである。19世紀半ばの建築物で以前はオテル・エリゼ・メルモーズという名前だった。オーナーはオリヴィエ・ブルイユで、ここでディレクターとして働いていた祖父が50年代に買い取ったホテルを彼が継いだそうだ。
左:落ち着きのある外観。 右:天井から自然光がさしこむ地上階のサロン。photos:@AmbroiseTezenas
2年がかりの大改装が行われた。スイートを含めて全27室の4ツ星ホテルとして再生したホテルを、彼は雲を意味するニュアージュと命名。飛行機に乗り窓の外の雲に目をやったところからの発想だ。時間と静寂こそがいまの時代のラグジュアリーであるという彼の思いからスロー礼賛のホテルとうたい、内なる時間を過ごせる場所を現代人に提案したいと願っている。室内建築を任せたのはジョルダンヌ・アリヴェッツ(Agence Notoire)。パブリックスペースも客室も、目を刺激する煌びやかさを排除し、落ち着きを感じさせる素材と色彩でシンプルにまとめられている。ホテルに飾られた写真やオブジェ類は骨董商のジュリー・バローが場所に合わせて選んだもので、中にはオーナーの筆による絵画も飾られている。ロビースペースはゆったりとした空間で、丸みを帯びた家具が目に優しいサロン風。チェックインでこのスペースに迎えられた時から、都会のリトリートの始まりである。大きなガラス屋根からは空が見えて、気持ちがいい。なお、バーコーナーも備えられているので、ここで静かなアペリティフタイムを滞在中にエンジョイするのもいいだろう。
室内にハンモックチェアが設けられ、プライベートテラスを有する2階のスイートルーム。photo:@AmbroiseTezenas
左:バルコニー付きの部屋は3室。 右:タイプが異なれど、どの客室も寛ぎを感じさせる。photos:@AmbroiseTezenas
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左:ホテルは地上階のガラス屋根を囲むように立つコの字型の建物。南仏を思わせる外壁の色に目が和む。 右:リネンカラーでまとめられたバスルーム。アメニティはフランス製のビオのTerre de Mars。photos:@AmbroiseTezenas
左:フロント後方のバーカウンター。 中:ホスピタリティあふれる空間作りで知られるジョルダンヌ・アリヴェッツ。 右:“雲”の生みの親、ホテルオーナーのオリヴィエ。photos:@AmbroiseTezenas
ビュッフェ朝食(24ユーロ)もスローフードがテーマだ。素材はパリ近郊からのビオにこだわり、またオリジナルの軽いムース風の“二ュアージュ”オムレツを用意するなど、ほかのホテルとは一線を画している。朝食をとる地下にはシネマルームがあり、ここでドキュメンタリーや映画鑑賞も可能だ。買い物にも便利な場所なので日中パリを活動的に巡ったあと、ホテルで静かな時間を堪能。ひとり旅になかなかよいホテルかもしれない。
左:鏡が旅の思い出に残る、地下の朝食室。ビュッフェは14時まで。 右:シネマルーム。photos:@AmbroiseTezenas
editing: Mariko Omura