J.ヌーヴェル建築のデュオ・タワーにスタルクがデザインしたホテルができた。

PARIS DECO 2022.11.04

10月20日に開業した4ツ星ホテル「TOO(トゥー)」。パリ13区にできたジャン・ヌーヴェル建築のふたつの塔からなる「Tour Duo(トゥール・デュオ)」のひとつの塔の上階を占めている。ホテルの室内建築を担当したのはフィリップ・スタルクで、つまり、ここは建築界の2大巨匠の仕事を1カ所で同時に発見できるという驚きの場所なのだ。トゥール・デュオの建築が始まったのは2011年で、ヌーヴェルとスタルクのコラボレーションによるホテルの建築は4年後の2015年だった。摩天楼へ!!というスタルクのアイデアから、ホテルのフロントは地上階に設けられ、チェックインした宿泊客はエレベーターで“空に浮かぶシャトーTOO”へとハイスピードで上るのだ。ホテルの地上階ホールは高い天井で、むき出しのコンクリートのラフな造りだが、フロントはそのコントラストで革や木素材を多用したこぢんまりとしたスペースとなっている。ホテルのコンセプトはローラン・タイエブによるもの。1区のホテル「Madame Rêve(マダム・レーヴ)」ですでにスタルクとコラボレートしている仲である。

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左:ジャン・ヌーヴェル建築のトゥール・デュオ。左手前の塔の18階から28階までが「TOO(トゥー)」のホテル、レストラン、バー。 中:地上階のフロント・フロア。 右:パリ中心部とは異なるレストランからの眺め。photos:(中・右)Mariko Omura

地上180メートルの27エム・エタージュ(日本の28階)がタワーの最上階で、ホテルが占めるのは17エムから。客室は17エムから24エム・エタージュ、レストランが25エム・エタージュ、そしてスカイ・バーが27エム・エタージュとなっている。温もりを感じさせ、快適感あふれるシンプルな内装の客室は鏡の遊びも加わって、外の景色が部屋に飛び込んでくるような造り。その景色といったら、広い空とパリらしからぬ街並が延々と続くのだ。合計139室あり、そのうち22がスイート。いちばん小さな部屋でも24㎡の広さがあるという。これはパリの中心部を外れた場所のホテルの利点のひとつといえるだろう。

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ジュニア・スイート・エッフェル。パリを独占する!

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左:ベッドの背側にデスクが設けられているので、窓の外を眺めながら仕事ができる。 中:壁、扉の鏡が室内に外の景色を取り込み、視覚の遊びを生む。 右:広々としたバスルーム。夜景を眺めながら、グラスワインのバスタイムを楽しんでみたくなる。photos:Mariko Omura

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バスルームとの仕切りはスライド式の鏡。小さなテラス付きの部屋もある。寝るだけでなく、日中の滞在もエンジョイしたいホテルだ。photos:Mariko Omura

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ホテルの住所は聞き慣れない通りの名前だ。地下鉄14番線のBibliothèque François Mitterand駅で下車し、フランス大通りをたどって10分弱という距離にある。途中、ニョキッとデュオ・タワーが姿を現すので道を間違える心配は全くない。大通りの片側は飲食店が軒を連ね、もう片側は開発が進む界隈らしく工事現場が続く。タワーの右手にはトルビアック橋が見え、これは市内のほかの橋とデザインが異なるせいか、なんだかニューヨーク、ブルックリンにいるのかという錯覚を起こさせる。タワーができたのはパリの最東端。裏手に広がるのはヴァンセーヌの森を含む、グランパリだ……と聞くと、不便な場所に聞こえてしまうかもしれないけれど、地下鉄14番線を使えばMadeleine駅までは6駅で、乗ってしまえばたったの13分という便利さである。

室料は部屋のタイプだけでなく、眺めによっても左右されるそうでエッフェル塔が見える部屋は見えない部屋より価格が高い。エッフェル塔が見えない部屋もあるのだけれど、それに対してスタルクとヌーヴェルは宿泊者たちに素晴らしいギフトを思いついた。客室フロアの廊下の両側に予定されていなかったガラス窓を設けることにしたのだ。これによって、ヴァンセーヌの森側の部屋の宿泊者もエレベーターを降りた時に、廊下の窓の向こうにそびえるエッフェル塔を眺めることができる。

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左:朝食のルームサービス用のペーパーバッグ。オーダー表を兼ねている。 中:廊下の部屋番号表示の下のフックに、朝食の袋が届けられる。 右:廊下の両サイドに窓が開かれ、開放感が得られる。片側はエッフェル塔方向、もう一方はグラン・パリの眺めだ(写真)。photos:Mariko Omura

フィットネスフロアは17エム・エタージュにあり、そのスパ「Too Chill」は資生堂のエココンシャスブランド「ULÉ(ウレ)」によるもの。ボタニカルスキンケアをうたうブランドで、ここが初のスパということからメニューはホテルと一緒に開発されたそうだ。テラスには最大10名が利用できるジャクジーが。お向かいのタワーで働く人々を尻目に、日中からというのも楽しいけれど、夜景を眺めながらのジャクジータイムも悪くなさそう。ジム、ジャクジー、サウナのアクセスは宿泊客に限られ、予約なしに自由に利用できる。サウナの中にはベンチが設けられ、これは移動可能というのがスタルクらしいアイデアだ。パリ市内のホテルにおいてスパやフィットネススペースは地下であることが多いのに対し、ここはまるで空に浮いているよう。この空間に身を置くだけで気持ちがリラックス。良いスパタイムの始まりだ。

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左:ULÉのスパ。 中:サウナもあるフィットネスルームにはフィリップ・スタルクがデザインしたマシンも設置されている。 右:テラスのジャクジー。photos:Mariko Omura

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さてこのタワー内のホテルの素晴らしさは、宿泊者だけに開かれているのではない。朝から晩までのノンストップ営業の25エム・エタージュにあるレストラン「Too Restaurant」はランチ、ディナーが宿泊客以外にも開かれているのはもちろんだが、週末以外は誰でも朝食(7時~10時30分)もとることができるそうだ。3方が6メートル高さのガラスで囲まれたレストランフロアに着いた瞬間に得られる驚きと感動!!  それはまた、スカイバーの「Too Tac Tac」でも体験できる。競い合うようにルーフトップがオープンしているいまのパリで、このスカイバーが右岸で最も高い位置にある。ホテルは室料の価格設定からもわかるようにエリート対象ではなく、それはバーでも同じこと。グラスワインは10ユーロ以下で楽しめ、カクテルにしても14ユーロからという手頃な価格設定がなされている。“○○と煙は高いところへ上る”と言われるけれど、構うものか。次のパリ滞在ではこのスカイバーに行ってみなければ!!

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レストラン。朝食は14ユーロ、29ユーロ。ランチは42ユーロ〜。ディナーは1名約100ユーロ見当。内装を担当したのはフィリップ・スタルクだが、天井はジャン・ヌーヴェルによるものとふたりのコラボレーションが生きている。

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レストラン内、壁のくぼみの中に作られた半個室もあれば、窓に面して背もたれの高い椅子が置かれた“ふたりの世界”席も。photos:Mariko Omura

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スカイバーのTac Tac。室内にはアンティークのカーペットが敷かれ、スピークイージ的雰囲気が漂う。ここはパリの最東端。外のテラス席はパリ市内に向いていて、エッフェル塔からサクレクール寺院までを一望できる。

TOO Hôtel, TOO Restaurant, TOO Tac Tac Skaybar
65, rue Bruneseau
75013 Paris
tel:01 78 90 79 90
www.toohotel.com
Instagram:@toohotelparis

editing: Mariko Omura

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