フランス留学で太らないために、たったひとつ持っていくべきもの。

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photo: iStock

「フランスに長く住んでる日本人の女の子と来たばっかりの女の子は、後ろ姿を見たらすぐわかるよね」

そう在仏日本人男性に言われたと、ある日、フランスに長く住んでる日本人の女の子である友人が言った。

お尻の大きさがまったく違うのだそうだ。ずいぶん失礼な話だが、私も以前、同じことを言われたおぼえがあった。

そこで私たちは自分たちのお尻についてしばらく話し合ったのだが、そこにいた全員が

「でも自分のお尻は全然大きくなっていないと思う」

という結論を出した。

一向に大きくなった気などしないし、はなはだ馬鹿げた話である。これは強がりなどではない。私など、長時間座っていても痛くないようなもう少し大きいお尻が欲しいとつねづね願ってきたくらいなのだから。

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「……でも日本に帰ったらお店で出てくるパスタとか、少なくてびっくりしない?」

しかしその時、突然切れ味鋭い一撃を放った友人の顔を全員がハッとしたように見た。そしてただうなずくしかなかった。

そうなのだ。いつからだろう、帰国中に、飲食店で出てくるひと皿ひと皿の少なさに一瞬、よくわからないが新手の遠近法かと思うことが増えた。ごちそうさまだけどごちそうさまじゃない。店を出ても微妙なパラレルワールドにハマったような違和感がある。

いや、これは「日本のお菓子が昔に比べてどんどん小さくなっている」という話と関係があるのでは?
私の食べる量が増えたのではなく、日本の飲食店で提供される料理の量も減ってきているのでは?
食べても食べてもなんだかもの足りない気がするこの腹具合は、純度100%の気のせいなのでは?

自分を落ち着かせるためにそんな考えを巡らせてみたこともある。

しかしある時、数年ぶりに帰国し実家でかつて自分が使っていたご飯茶碗を手に持った際の衝撃は、そんな自分の甘ったれを一瞬で吹き飛ばす力があった。

「あれ、これ、子ども用だったっけ……?」

と本気で思ったのだ。大人になってから母校を訪ね小学校低学年用の椅子に腰かけたときと同じくらいの驚きがあった。自分が予想していたサイズ感とのズレに視覚も触覚も追いつかない。

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既出の友人たちは全員この「ご飯茶碗」についても同じ経験をしていた。そしてほぼ同時に思った。元凶は、あれだ。あいつだ。

カフェオレボウルだ……!

フランスで家庭を持ち終の棲家とするつもりの人なら、ご飯茶碗も箸置きも汁椀も甘酒メーカーもお気に入りのものを用意し生活を整えている人が多いかもしれない。しかし1年の留学、数年の滞在予定ならどうだろう。限られたトランクの空間を、わざわざご飯茶碗を入れるために浪費しない人がほとんどではないだろうか。

そこでその形状の類似性から、代打として真っ先に思いつくのがカフェオレボウルだ。1年も滞在すれば毎日パンも食べていられない。米を入手し日々なんとなく日本の家庭料理っぽいものを作る食生活が予想される。

しかしカフェオレボウルというものは、ご飯茶碗よりも、すごく、たくさん、ご飯が入ってしまう。
私が長らくご飯茶碗の代替品として使っていた愛用のカフェオレボウルなど、のちに確認したところ実家のご飯茶碗3杯分のほかほかご飯がサクッと入ってしまった。恐るべき包容力である。

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そして最も恐ろしいのは、私がこの日、友人たちと話し合うまでカフェオレボウルが元凶であると確信できなかったことだ。実家でご飯茶碗の小ささに恐れおののいても心のどこかで「何かの間違いではないか」とまだ重い腰をあげられずにいたのだ。

「海外留学でいつのまにか激太りしていた」「最初は巨人用かと思ってた食事量を顔色ひとつ変えずに完食」という一種の寓話のような話を、かつての私はどこか他人事のように感じていた。そればかりか「10キロ太る前に3キロあたりで気がつくに決まってる」「量が増えたら目に見えるんだから“いつのまにか”なんてありえない」などと、人間の適応能力をなめ切っていたのだ。

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しかし「いつのまにか」自身が見たこともない遠い遠い場所まで運ばれてしまっていることは、この荒唐無稽な世界を大した指針もなく生き抜くことを余儀なくされたわれわれにとって、いつでも起こりえることである。

ご飯の量はいつのまにか、増えている。
お尻はいつのまにか、特にお報せもないまま大きくなる。
胃袋はいつのまにか、音もなく静かに、しかし着々と容量を増やしていくのだ。

たとえトランクの空間の無駄遣いのように思えても、日本で使っていたご飯茶碗を詰め込んでおくことはその後の自身の身体のために大いに役立ってくれる。

反省した私はすぐに日本で愛用していたご飯茶碗を渡仏させた。そして人生で初めての緻密で真剣勝負な減量と筋トレに挑んだ。するとあっというまに帰国時の食事量にびっくりすることがなくなった。振り返ってみればあんなにびっくりしていた自分が不思議なくらいだ。

数カ月なら別に構わない。でもこれから1~数年フランス滞在する人たちには、たかだかご飯茶碗と思わずぜひ真剣に耳を傾けてみてほしい。

カフェオレボウルは、お茶碗の代わりには、ならない。

パリの片隅で美容ごとに没頭し、いろんな記事やコラムを書いたり書かなかったりしています。のめりこみやすい性格を生かし、どこに住んでもできる美容方法を探りつつ備忘録として「ミラクル美女とフランスの夜ワンダー」というブログを立ち上げました。

パリと日本を行き来する生活が続いていますが、インドアを極めているため玄関から玄関へ旅する人生です。

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