「理不尽な上司にイライラしています」。伝説の編集長はどう答える?

フィガロジャポン5月発売号から始まる新連載「たゆたえども沈まず 島地勝彦人生相談」。読者から寄せられた悩みに、かつて『週刊プレイボーイ』を100万部売った“伝説の編集長”島地勝彦が答えます。madame FIGARO.jpでは連載の開始に先立ち、web限定で人生相談を実施しました。第2回目の相談者は、職場の上司の理不尽さに悩む女性。さて、シマジ先生の回答は?

Q. 理不尽な上司にイラついています。

毎日、上司にイラついています。自分の能力が低いこともあるかもしれませんが、仕事の振り方が明らかに理不尽です。明らかな八つ当たりも日常茶飯事です。別の先輩に相談すると、そうやって経験を積んで立派になっていくもんだ、としか返ってきません。その意見には甚だ疑問です。時代遅れだと思います。でも、先輩方が立派な編集者に育っていることも事実のようです。編集者になりたくて、やっと潜り込んだ現在の職場は、今年で4年目です。このまま耐えて続けるべきか、ほかの道を行くべきか悩みます。私は根気が足りないのでしょうか?(30歳/編集プロダクション アシスタント)

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photo:MIREI SAKAKI

A. 相談者は理不尽な上司に毎日イライラさせられているようですが、こんなことはサラリーマン人生ではよくあることです。相談者がいま短気を起こして、辞める必要は絶対にありません。あなたは運良く、憧れの編集者の入り口に立ったのですよ。古人曰く、まさに「短気は損気」です。

もしわたしがまた人間に生まれたなら、やはりまた編集者の道を選ぶでしょう。それほど編集者という稼業は、魅力的な商売です。自分の発想力と行動力で、誰も思いつかなかったアイデアを実現できるのは、何ものにも代えがたい快感です。相談者も、いずれそういう快感を味わうときがくるでしょう。

相談者に八つ当たりすることで、編集部の不和を生むその理不尽な上司は、年齢的に考えても、必ずあなたより先にその編集部を去って行く運命にあります。悔しいときこそ奥歯を噛みしめて、その上司に敢えて笑顔を見せて、応対してください。その上司があなたのことを見込んで叱っているとしても、気に食わないと思って八つ当たりしているのだとしても、笑顔で頑張るあなたの姿には弱いはずです。そして、周囲の人たちは、必ずやあなたのそんな姿を見ています。

わたしは25歳から67歳まで、集英社で編集者として働きました。イラつく上司、大好きな尊敬出来る上司、どうでもいい凡庸な上司がいました。長いサラリーマン人生を振り返ってみると、わたしは上司として部下を褒めて使うタイプでした。笑顔で“褒め殺す”くらいまで部下を褒めることで、相手は本来以上の力を発揮できるものです。結果、現場は明るくなり、団結はさらに強くなり、雑誌や書籍は必ず売れたものです。

相談者はいまアシスタントという立場のようですが、わたしがいままで出会った有能な編集者とは、多くの人たちが口を揃えて「不可能です」と思うテーマを、軽いアクビをしながら、やってのける強者のことです。ですから相談者がたとえアシスタントという立場であっても、いまのうちから奇想天外なアイデアを、しっかり考えておくべきです。

相談者が一人前の編集者になりたいのなら、小説を読むよりも、ノンフィクションを読んだほうがいいと思います。なぜなら小説はあくまで絵空事ですが、ノンフィクションは時代を映し出す事実の集積だからです。編集者に必要な才能は、いまという時代をとことん面白がり、時代とともに踊ることです。ぐぁんばれ、悩める若き相談者!

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1941年生まれ。『週刊プレイボーイ』編集者として直木賞作家の柴田錬三郎、今東光の人生相談の担当者に。82年に同誌編集長に就任、開高健など人気作家の人生相談を企画、実施。2008年からフリーエッセイスト&バーマンとして活躍。現在は西麻布『Authentic Bar Salon de Shimaji』でバーカウンターに立ち、ファンを迎えている。

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