たゆたえども沈まず 島地勝彦人生相談 とても楽しい友達だけどお金にルーズ、許してあげるべき?

読者から寄せられた悩みに、かつて『週刊プレイボーイ』を100万部売った“伝説の編集長”島地勝彦が答えます。

Q.お金を返さない友人、 許してあげるべき?

話がおもしろく、一緒に過ごしていてとても楽しい友人なのですが、 金銭面でルーズなことに困っています。食事に行けば「今日持ち合わせが……」と言われ、ほぼ毎回私が財布を開くことに。映画代やコーヒー代くらいならすぐに返してくれますが、催促するまで何も言ってこないこともあり、こちらもあまりお金の話ばかりしたくないので、結構な金額が返ってこないままになっています。コロナの影響でしばらく遊びに行くこともなく、この自粛期間でいろいろ考えてしまい、だんだんと腹立たしい気分になってきました。私は彼女を許してあげるべきなのでしょうか?(医療事務/30歳)

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photo: MIREI SAKAKI

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A.

相談者は、黄熱病の研究で有名な野口英世をご存知でしょうか。ノーベル賞候補に3度も推挙された彼ですが、稀代の浪費家であったことはあまり知られていません。アメリカ留学の夢が叶い、いよいよ出発が近づいたときのことです。 彼は送別会と称して数十人の仲間を集めてドンチャン騒ぎを繰り広げ、その留学資金500円を、ほとんど使い果たしてしまったのです。そもそも、そのお金は婚約相手の親や、東京の父母と仰ぐ夫妻から援助してもらったものでした。アメリカ行きは絶望的と思われた野口でしたが、友人の歯科医が高利貸しから借金をして 300円を工面し、なんとか野口を送り出すことができたのです。そんな傍若無人な男にもかかわらず、今日すました顔をして千円札にちゃっかり収まっているのは、なんという皮肉でしょう。

多くの友人が野口英世を支えてくれたのは、きっと彼に気前の良さがあったからでしょう。自分に回ってきたお金は懐に貯め込まず、他人のために惜しみなく使いました。使ったお金以上の恩恵が、 必ず自分に還流するということを本能的に知っていたのかもしれません。いまや時代錯誤ですが、わたしも編集者時代は野口英世に倣い、社費を羽振りよく使って膨大な数の宴席を設けてきました。気前良くおごった才能ある作家たちは、その倍以上の利益を会社にもたらしてくれたものです。しかし、これは決して“お金のことなど気にするな”という話ではありません。お金にルーズな人間には、自分の財布を他人のために開く人と、他人の財布に頼るだけの人の2種類がいます。そこをしっかり見極めることが大切です。野口英世は借金大王でもありましたが、間違いなく前者でした。 

相談者は、お金を返さない友人に腹が立っているようですね。それはあなたに、“おごらされている”という被害者意識があるからでしょう。その感情がある以上、友人としての信頼関係も、アーティストを援助するパトロンのような関係性も存在していないように思えます。失礼を承知で申し上げますが、相談者は体よく“たかられている”と言わざるを得ません。これまで自分が支払った金額は勉強料だと割り切り、その友人とは距離を置くことをおすすめします。 

お金は人を裁くものです。お金を目の前にして、どのような態度を貫くことができるか。人間の品格を暴いてしまうものが、まさしくお金であるということを相談者にはお伝えしたいと思います。

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*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋

1941年生まれ。『週刊プレイボーイ』編集者として直木賞作家の柴田錬三郎、今東光の人生相談の担当者に。82年に同誌編集長に就任、開高健など人気作家の人生相談を企画、実施。2008年からフリーエッセイスト&バーマンとして活躍。現在は西麻布『Authentic Bar Salon de Shimaji』でバーカウンターに立ち、ファンを迎えている。

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