『愛のまなざしを』の撮影現場で、仲村トオルと杉野希妃を齊藤工が撮影。

俳優・斎藤工が、アーティスト・齊藤工として手がける、モノクロ写真。尊敬する人、会いたい人にカメラを向け、映画のメインキャストを撮影するように、一瞬の表情と佇まいを写し取る。フィガロジャポン本誌「齊藤工 活動寫眞館」に未掲載のカットと、齊藤自身の言葉で、撮影舞台裏を綴ります。今回は、現在公開中の映画『愛のまなざしを』で共演した仲村トオルと杉野希妃を撮影した。

強烈な自我を持つ女性を軸に、狂気ともいえる愛を描いてきた鬼才・万田邦敏監督が、カンヌ国際映画祭にて二冠を達成した『UNloved』、そして『接吻』に続き、共同脚本として万田珠実と三度目のタッグを組んだ『愛のまなざしを』。

2019年の撮影直後にコロナ禍に見舞われ、ようやく公開を迎えた本作に出演した齊藤だが、実は俳優として生まれて初めてカメラの前に立ったのが万田作品。小学2年生の時だったという。

「万田作品、短編はコメディだったりしますが、長編、特に愛三部作に対しては個人的にクロード・シャブロルを感じました。そこに姿形を成している露骨な男女の愛憎的な肉片ではなく、見えないが人間の業という旨味をふんだんに抽出している作品だと思います」

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『UNloved』と『接吻』でもキーパーソンを演じるなど、万田作品において欠かせない俳優のひとりといえる仲村トオル。亡くなった妻に囚われながら夜ごと精神安定剤を服用し、患者としてやってきた綾子(=杉野希妃)に溺れていく精神科医・滝沢貴志を演じた。

齊藤にとっては仲村との共演も念願だったのだとか。デビュー当時、ある作品で仲村が務める役柄の幼少期を演じたという不思議な縁を持つからだ。

「仲村さんは、いつお会いしても父性と母性でさりげなく包み込んで下さるような大きい方。それでいて本作で対峙した時のゾッとするような奥深い迫力にはやられました」

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杉野希妃が演じたのは、モラハラの恋人に連れられ、患者として貴志の前に現れた水野綾子。恋人との関係に疲弊し、肉親からの愛にも飢えていた彼女は、貴志の診察に救われたことで、彼に愛を求める。

「杉野さんはデビュー当時からアジア映画の未来を冷静と情熱を持って見据えていらっしゃった稀有な映画人。彼女の行動に感化された女優さん、フィメール監督、プロデューサーは数知れず。唯一無二な方」

互いに求め合い救われながらも、はぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれていく......。愛の本質を見つめ、人間の性とエゴをあぶりだした愛憎サスペンスが完成した。

『愛のまなざしを』
●監督/万田邦敏
●出演/仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐 ほか
●全国公開中
https://aimana-movie.com
TORU NAKAMURA
1985年「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューし、数々の新人賞を受賞。‎「あぶない刑事」シリーズ、チーム・バチスタ」シリーズなど映像作品で活躍を続け、香港、韓国、中仏合作など海外の映画にも出演。舞台のキャリアも重ねている。「日本沈没-希望のひと-」(TBS系)
出演中。主演映画『愛のまなざしを』が全国公開中。
KIKI SUGINO
プロデュース兼出演作に『歓待』『おだやかな日常』『ほとりの朔子』ほか、監督作に『マンガ肉と僕』『欲動』『雪女』。近年の出演作は『ユキとの写真』、全国公開中の『愛のまなざしを』。女優、監督、プロデューサーとして海外の映画人とタッグを組むなど、あらゆる枠を超えた活動を続けている。

TAKUMI SAITOH

ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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