「ヒヤマケンタロウの妊娠」の撮影現場で、上野樹里を齊藤工が撮影。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2022.01.19
俳優として活躍しながら、映画監督やフォトグラファーとしても精力的に作品づくりを続けるアーティスト・齊藤工。彼が尊敬する人や会いたい人にカメラを向け、一瞬の表情と佇まいを切り取る。今回55回目を迎えたフィガロジャポン本誌の連載「齊藤工 活動寫眞館」。madame FIGARO.jpでは本誌未掲載のカットと、齊藤自身の言葉で、撮影の背景やエピソードを綴ります。今回は、Netflixとテレビ東京の共同企画・製作、Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」で共演した上野樹里を撮影。
2021年秋に公開された「ヒヤマケンタロウの妊娠」のティザーアートに衝撃を受けた人も多いのではないだろうか。斎藤工演じる桧山健太郎が大きなおなかを支える様子は、マタニティフォトそのもの。「もし男性が妊娠したら?」というテーマをコミカルに描いた同名のコミック(坂井恵理著、講談社刊)が原作だ。エリート広告マン・桧山健太郎がある日突然(妊婦ではなく)妊夫になり、つわりなど妊婦ならではの苦しみを体験しながら、徐々に心境が変わっていく。そんな健太郎のパートナー・瀬戸亜季を演じたのが上野樹里だ。
「シリアスでもコメディでも唯一無二の空気感の樹里さん。本作ではニューノーマルの時代を迷いながらも力強く生き抜く樹里さんならではの女性像を表現されています。現場では、佐々部清監督のお話をした事が印象的でした」
実は齊藤自身、「撮影現場等に託児所を設けられないかとずっと考えていた」背景があり、「この作品との出合いは必然だった。撮影を通して、ふだん見えなかったものが見えてきた」と振り返る。
妊娠という現実では有り得ないことを作品中に体験した齊藤。ジェンダーバイアスやリスペクトトレーニングを受け、さらに働く妊婦の悩みのタネであるキャリアとの折り合いの着け方や妊婦の痛みも疑似体験したうえで撮影に臨んでいる。友人女性が第一子を妊娠という状況も間近に見ていた。
「"こうであろう"と外から想像しているだけなのと、疑似体験との大いなる差異を実感しました。本作はコメディベースなので観やすいながらも、多くの方々の日常に"妊婦さんの視点"が増える事を願っています」
同時期、フィガロジャポン編集部のエディターIGAが第二子を妊娠中で、その日が予定日だと担当デスクKIMから齊藤に伝えたところ「ご無事な出産を祈っております」という丁寧なメッセージをくれた。
社会派コメディと謳われ、娯楽として軽やかに楽しめる同作だが、この作品がリリースされることで何か新しい議論が生まれるのかもしれない。
●監督/箱田優子、菊地健雄
●出演/斎藤工、上野樹里、筒井真理子 ほか
●2022年配信
www.netflix.com/jp/title/81030178
1986 年生まれ。主な出演作はドラマ「のだめカンタービレ」「監察医 朝顔」、映画『陽だまりの彼女』など。待機作は斎藤工と共演した、Netflixとテレビ東京の共同企画・製作、Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」。
TAKUMI SAITOH
ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi