齊藤工が表現する、相対する美しさ。安達祐実とMEGUMI

映画監督そしてフォトグラファーとして表現活動を続ける齊藤工が今回、フィガロジャポン本誌とmadameFIGARO.jpにて連載中の「齊藤工 活動寫眞館」でカメラを向けた被写体は、ふたりの女優。安達祐実とMEGUMIだ。俳優・斎藤工として出演した映画『零落』の主人公、漫画家・深澤薫と関わり、その心情に影を落としていく重要な役どころを演じている。齊藤工、安達祐実、MEGUMIは、実際ほぼ同じ年齢だ。今回時間をともにして、どのような感慨を抱いたのか、どのような姿をモノクロ写真で捉えたかったのだろうか。

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齊藤はかつて『blank 13』という長編映画を監督している。その時のキャストやスタッフには同い年が多かった。当時インタビューした時、年齢が近いメンバーとともに作品を創る、ということを齊藤はとても意識しているように感じたが......
「"世代括り"の意識は余りないです。然りとて、おふたりの活動、活躍を兼ねてから見て来た人間としては、このタイミングで、この形で共闘させていただけるのかと、映画『零落』は感慨深い出来事でした。現場でも『世代近いですよね』という言葉をいただいた記憶もあります」

同じような頃に多感な思春期を過ごし、時代のカルチャーや社会現象を体感することによって育まれた連帯のようなものは、『零落』という映画に"何かしらの空気感"を纏わせたに違いない。

MEGUMIが演じるのは深澤の妻、のぞみ役。齊藤とはかなりの修羅場となる役柄だ。
「MEGUMIさんは準備段階から常にプロデューサーとして作品への尽力をされていて、本当に頭が下がります。さらに他の作品や事業やもちろん女優業、お母さん業もこなされている...そんな奥行きの広いMEGUMIさんにしか演じられない"のぞみ"がそこにいました」

MEGUMIも安達も、世間に一度抱かれた過去の印象をガラリと変えて脱皮し、新しい女性像を表現している俳優たちだ。MEGUMIはバイプレイヤーとしてのスパイスを作品に効かせる優れた演者としての才能を日本映画界に知らしめている。商業的に成功している監督からも、作家主義を貫く監督からも注目された存在。
一方の安達祐実は、あまりにも衝撃的で強いイメージを打ち立てた子役時代を経て、現在は「あどけない美しさを継続させながら大人の魅力も加味した憧れの女性」として女性誌から引っ張りだこ。
「あの安達祐実さんだ......みたいなことを世代的にも思ってしまいそうでしたが、現場での安達さんは"牧浦かりん"として深澤とのいままでの接点、のぞみを介しての距離感を自然に想起させるように保って下さっていたように思います。わずかな時間の接点でしたが、表現者としての"凄まじさ"を感じました」

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安達祐実は2021年12月、MEGUMIは21年11月に、映画『零落』の撮影現場にてポートレートを撮影。

安達が本作『零落』で演じたのは、精神的にも安定し、これからのコミック界でも無理なく生き残っていけるであろう漫画家・牧浦かりん役。人気も人生も堕ちていく深澤薫と鮮やかにコントラストをなす役どころだ。今回、MEGUMIと安達祐実を一緒に掲載したが、コミック編集者である妻のぞみ(MEGUMI)の関心が、夫である深澤を通り過ぎ、どんどん人気漫画家・牧浦(安達祐実)に奪われていく......というシチュエーションは、そうとう苦く痛い。
「本作の"零落"は、深澤本人が堕ちていくというより、周りの女性たちの光・輝きが眩しく、目が霞んでいくような感覚であるような気も自分としては感じます。自分が堕ちるのではなく、周囲が上がっていく姿を見えなくなるまで見上げる。自分は、自分だけは時計が止まったかのように同じ場所から動けずにいる。そんな思いが観てくださる方の"心当たり"に届くことを願っています」

安達祐実/Yumi Adachi
1981年生まれ、東京都出身。2歳でモデルとしてデビューし、子役としてドラマ「家なき子」(94年)などで国民的人気を博す。その後、大林宣彦監督の映画「野のなななのか」、豊島圭介監督『花宵道中』(ともに2014年)、清水崇監督『樹海村』(21年)、瑠東東一郎監督『極主夫道 ザ・シネマ』(22年)など数多くの作品に出演。近年はアパレルブランドのプロデュースを手がけるなど多彩な活動を見せる。
MEGUMI
1981年生まれ、岡山県出身。ドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」(2019年)、「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」(22年)など話題作に出演。映画では白石和彌監督の「孤狼の血」(18年)、市井昌秀監督「台風家族」(19年)、「ひとよ」(19年)で再び白石監督とタッグを組む。中田秀夫監督「事故物件 恐い間取り」(20年)や、三木聡監督「大怪獣のあとしまつ」(22年)などの軽妙な演技も評価が高い。第62回ブルーリボン賞にて助演女優賞受賞。
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齊藤工/TAKUMI SAITOH
主演映画『零落』が2023年3月17日から公開。弁護士を演じたた映画『イチケイのカラス』が現在公開中、また放映中のテレビ朝日系連続ドラマ「警視庁アウトサイダー」に小山内雄一役で出演。長編監督最新作『スイート・マイホーム』も今年公開される。

『零落』
●監督/⽵中直⼈
●出演/斎藤⼯、趣⾥、MEGUMI、安達祐実ほか
●原作/浅野いにお「零落」(⼩学館 ビッグスペリオールコミックス刊)
●配給/⽇活、ハピネットファントム・スタジオ
●2023年3月17日より、テアトル新宿ほか、全国にて公開
©2023 浅野いにお・⼩学館/「零落」製作委員会
happinet-phantom.com/reiraku/

TAKUMI SAITOH

ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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