齊藤工が撮った趣里は、妖艶でイノセント。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2023.03.20
妖艶でイノセント......両極の魅力を持つ「猫目の女」として、斎藤工の主演作『零落』で共演した趣里。齊藤工によるフィガロジャポン本誌の連載「活動寫眞館」2023年5月号に掲載した趣里の写真は、ページをめくる人を誘惑するようにこちらを見ている。本当に目が合っているのか、確信が持てないような色香のある眼差しで。
「ちふゆ→趣里さんは完璧過ぎるキャスティングだなと。忘れもしない、8年程前、おとぎ話の『COSMOS』というMVにて、失意の感情からワンカットで銀座の街で可憐に舞う趣里さんは衝撃的でした。大好きなMVなので近年もよく見直しますが、いつも"おとぎ話"のタイトルが出るところとかで鳥肌立ちます。YouTubeで観られるのでオススメです」
2021年12月、映画『零落』撮影現場にて。本誌とは異なるカットをこちらには掲載。以下も同様。
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趣里が演じるちふゆと齊藤工演じる漫画家深澤の共演シーンは、『零落』全体の中で少しだけ異なるトーンを持つ。どこか浮遊感があり、ロマンティック。気持ちはドン底、人生の淵に立たされている深澤にとっての「逃げ場」でもある。プライドをずたずたにされ、自身がどうなっていくのか・どうしたいのかすらわからなくなっていて、どうすることもできない深澤の厭世的な無力感に、柔らかな潤いをもたらすのがちふゆが関わるシーンだ。
田舎でのデートの場面の絵がとてもシュールで、まるで植田正治の写真のようにも思え、ジャック・タチの映画に出てくるユニークな近未来感も感じる。上野駅の歩道橋の上でのリアルな風景の中の待ち合わせからいたる、ふたりの夢の中のような世界に思わず導かれてしまう。ラブシーンに流れる「Speak Low」というスタンダードナンバーもシックにマッチしている。
フィガロジャポンのファッション撮影にも以前、参加してくれた趣里。撮影担当の編集者は、趣里が奏でるムードがとてもモード感があって撮影しやすかったと言っていた。
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「私は役柄の性質上"回復しない状態"で日々現場に沈み漂ってましたが、趣里さんは現場の太陽のような存在でした。そして、深澤との距離感含め、ちふゆという浅野いにお先生の、救いの概念のような象徴であるヒロイン像を、最高な形で表現していました」
映画『零落』の中の、クリエイターが対峙地獄のような苦しみの描写からふと転調するちふゆ(趣里)のシーン。映画館でその場面に出会う時、趣里という演者の放つ魅力に多くの観客が引き込まれるに違いない。
1990年生まれ、東京都出身。2011年に女優デビュー。舞台、テレビドラマ、映画など幅広く活躍。出演作に山戸結希監督映画『おとぎ話みたい』(14年)、大九明子監督『勝手にふるえてろ』(17年)、李相日監督『流浪の月』、山岸聖太監督『もっと超越した所へ。』(22年)など。主演作『生きてるだけで、愛。』(18年、関根光才監督)で日本アカデミー賞新人俳優賞など多数の賞を受賞。現在公開中の『零落』(23年)では猫目の女・ちふゆを演じる。23年後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の主人公に決定。
●監督/⽵中直⼈
●出演/斎藤⼯、趣⾥、MEGUMI、安達祐実ほか
●原作/浅野いにお「零落」(⼩学館 ビッグスペリオールコミックス刊)
●配給/⽇活、ハピネットファントム・スタジオ
●2023年3月17日より、テアトル新宿ほか、全国にて公開
©2023 浅野いにお・⼩学館/「零落」製作委員会
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TAKUMI SAITOH
ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi