齊藤工から石橋蓮司へ、憧れは緊張を生むものではあるけれど......

2024年4月、齊藤は再び大分県別府を訪れ、日本有数の映画愛のミニシアター、別府ブルーバード劇場に出向いた。阪本順治監督による石橋蓮司映画祭のためだった。

画面を引き締め、ムードを変える。観客が慣れきっていた物語の展開にアクセントを加える。感情にざわめきを与える。映画やドラマが物語を進行していくうえで、石橋蓮司という俳優が投げかけるものは、文句なしに素晴らしい。別府ブルーバード劇場での映画祭も、阪本順治の石橋蓮司への敬愛から生まれたものでもある。

「主演作である『出張』(沖島勲監督)や、ミュージカルチックな『狼と豚と人間』(深作欣二監督)の蓮司さんは特に印象的ですが、今回の石橋蓮司映画祭にて初めて観ることができた、デビュー作『ふろたき大将』(関川秀雄監督)は素晴らし過ぎて鳥肌が立ちました。隣にいらした藤山直美さんも涙されていました」(齊藤)

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別府にて齊藤工が撮影したモノクロポートレート。

若い時代のハードボイルドな石橋蓮司のカッコいい姿ももちろん映画好きの記憶に強く残っているとは思うが、まもなく83歳を迎えようとしている石橋蓮司は柔和な表情の役柄も多くなってきている。ただ、人生のどのステージにおいても、その年代の役柄を作品のキーパーソンとして見事に仕上げていくカッコよさは、石橋蓮司にしか成せない業だと感じる。だから、この映画祭にも藤山直美や岸部一徳などが駆け付けてしまうのだ。

「(このモノクロポートレートは)阪本順治監督がプロデュースした、別府ブルーバード劇版での石橋蓮司映画祭の隙間にて撮らせていただきましたが、極力ナチュラルなスナップにしたかったので、その意図を石橋さんが汲んで下った感じがしました。

蓮司さんは私にとって銀幕の中の大スターであり大先輩ですが、オフのマイルドかつユーモラスなお人柄がまた最高に好きです。そんな雰囲気が写真から伝わったら本望です」(齊藤)

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ハンチング棒を被った石橋蓮司が見せる優しい表情。だが、その瞳の奥に、不気味なほどすごみのある光が宿っているのを、齊藤工は見逃していなかった。

石橋蓮司/RENJI ISHIBASHI
1941年生まれ、東京都出身。劇映画はもちろん、舞台、テレビで活躍する俳優であり、劇団第七病棟を主宰する演出家。日本アカデミー賞、ブルーリボン賞など、俳優として多数の受賞作がある。2023年には『大名倒産』『せかいのおきく』『リボルバー・リリー』など計5本の公開作に出演、24年もすでに『風よ あらしよ 劇場版』『お終活 再春!人生ラプソディ』の 2本が公開された。「TOKYO VICE Season2」(WOWOW)にも出演。

TAKUMI SAITOH

ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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