『グッバイ・クルエル・ワールド』の撮影現場で、三浦友和と玉城ティナを齊藤工が撮影。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2022.09.20
俳優・斎藤工として活躍しながら、映画監督やフォトグラファーとしても精力的に作品づくりを続けるクリエイター・齊藤工。2017年にスタートしてから、今号で63回目を迎えたフィガロジャポン本誌の連載「齊藤工 活動寫眞館」では、彼がこれまでに出会ったアーティストや尊敬する人にカメラを向け、一瞬の表情と佇まいを切り取る。madame FIGARO.jpでは本誌未掲載の撮りおろしカットと、齊藤自身の言葉で、撮影の背景やエピソードを綴ります。今回は『グッバイ・クルエル・ワールド』の撮影現場で、出演者の三浦友和と玉城ティナを撮りおろした。
映画『グッバイ・クルエル・ワールド』は、『日日是好日』(2018)などで知られる大森立嗣監督による最新作。ヤクザ組織から大金を奪い取った強盗団が、ヤクザが裏金で雇った現役の刑事に追われるというストーリーで"銃撃戦クライムエンターテインメント"として現在公開中だ。主演は、大ヒットした『シン・ウルトラマン』でも記憶に新しい西島秀俊、強盗団の一員として斎藤、三浦、玉城らが出演する。斎藤は、映画界の大先輩・三浦友和と共演したことをこう振り返る。
「西島さんも公言されていましたが、大映画スターであられる友和さんが、アート系からメジャー系まで縦横無尽に映画界を、どこか軽やかに渡り歩く姿には多くの俳優が影響を受けていると思います。恐れ多いですが、かく言う私もその1人です。現場での佇まいから、宣伝活動への献身、すべてを学びとさせていただきました」
同じく強盗団の一員を演じた玉城ティナ。スクリーンの中では、車にひかれたり、顔を踏みつけられるなど、過激なシーンも多数ある。斎藤とは蜷川実花監督『Diner~ダイナー』(19年)で共演を果たしている。
「玉城さんが作品の中に存在している世界線がすでに、ゴダール映画に置けるアンナ・カリーナというか、シネマティックになる希有な存在。本作でも宮沢氷魚さんとのツーショットは、邦画の希望的な未来図のように神々しかったです。
生まれながらにハイスペックと言うか、もともと"兼ね備えている"若い世代の方々の存在を認め、彼ら彼女らが軸となり創り上げる映像業界をはじめ社会全体の新しい様式に早くなって欲しいなと、昭和世代のおっさんとして願っております」
"フリー"の犯罪者を演じた斎藤が、自身の役に対し「愛しい思いを持ち、足し算・引き算をしながら、いくならとことんやろうと監督と一緒にキャラクターを作っていった」と話す今作品。その役としての豹変ぶりには、玉城や、同じく共演者の宮川大輔からは「普段の優しい斎藤さんとのギャップがありすぎて怖かった。本番でいきなり雑誌とかを投げてきて」との声もあがっている。バイオレンスな展開の中に見える、豪華俳優陣たちのぶっとんだ演技とその重厚感に注目したい。
1952年生まれ。映画『伊豆の踊子』(74年)でブルーリボン賞新人賞を受賞。代表に、映画『M/OTHER』(99年)、『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011年)、『葛城事件』(16年)などがある。公開中の『グッバイ・クルエル・ワールド』のほか、『線は、僕を描く』『ケイコ 目を澄ませて』など、出演作の公開が多数控えている。
1997年、沖縄県生まれ。14歳でモデルデビュー。2014年に女優デビューを果たし、15年には映画『天の茶助』で映画初出演を果たす。19年、『惡の華』『Diner~ダイナー』での演技が評価され、報知映画賞新人賞を受賞。公開中の映画『グッバイ・クルエル・ワールド』では強盗団の一員を演じる。
TAKUMI SAITOH
ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi