【篠原ともえ連載Vol.8】肌に優しいデザインアイテム"革のアクセサリー"をつくる。
TOMOE SHINOHARA MAKING 2021.02.22
日本産の革を使いオリジナルの革アクセサリーをデザインしました。革と向き合う中で生まれた私からの新しい作品は「肌に優しい金属アレルギーの方達にもお使いいただける」革アクセサリーの提案です。
触れても撫でても心地良い革で、これまでにない金属のチェーンアクセサリー風に。素肌に馴染むヌードカラーで撮影しました。作品完成までにも高度な職人技術が必要で「こんな難しいことは挑戦したことがない」と職人さんもおっしゃるほど新しい挑戦でもありました。現場のディレクションは新しく立ち上げたデザイン会社のチームと一緒に。
仕上がるまでどんなことができるか考え、デッサンなどを描き遠隔作業でも完成のイメージを共有することも大切なプロセス。私自身も目打ちやカッターでサンプルも作ってみました。風合いや感触を丁寧に確かめながら指示書を制作してゆきます。
一番大きなブレスレットは自作作品を起用しました。実物の天然の革に触れた時の皮膚感覚がとても優しく、触れてうれしいものを作りたいと感じながら道具を使って自分でも体験。こういう細かい作業をするのがとても好きです…!実は革素材にはかねてから興味があり、2019年にモロッコの旧市街のフェズという革工房に行ったことがあるのです。
ここは世界遺産にもなっているのですが、その工程もフェズならではの伝統が今も残されており、革を柔らかくするために、なんと鳥のフンを使っていました。一時は大量生産のために別のものに変えたこともあったそうですが、独特の風合いを引き出すのは叶わず、やはり天然のものは天然のものと相性がいい、揺るぎない答えがあったんですね。
今回このアクセサリーを作るために日本産の“皮”はどのように“革”に生まれ変わり、バッグや革小物となって私たちの手元に届けられるのか知るために「栃木レザー」というタンナー(製革業者)にもお邪魔しました。
革は、季節ごとの水の温度や湿度などによって、同じ色でも仕上がりが変わってくる生きているような素材。もともと天然素材であるということはもちろんなのですが、日本でも食肉に使われた副産物から革を生み出し、ミモザの樹液を使用して革を柔らかくする「植物タンニン鞣し」などまさに“エシカル消費”に繋がっていることも素晴らしいですよね。
タンナーの方の「近年SDGsが話題になっていますが、この業界はもともとがそうした考え方です」という言葉も印象的。消費された動物たちの命の贈り物を無駄にしないで活用していき、それが私たちの生活の中で活用されていくということも、ものづくりの学びがありました。
今回は日本産の革のことを知るために、東京・本所吾妻橋にあるハシモト産業さんにも。豊富なラインナップがある中で最終的に選んだのは、柔らかなエコソフトという素材のナチュラル感がある色にしました。革の原皮は北米産が多いのだそうですが、私の選んだものは国産の原皮を使った革。約半年かけてこの完成にやっとたどり着きました。これまでの撮影風景や製作のプロセスを収録した動画や展開が”革きゅん”というサイトでご覧いただけます。
実物の革作品と写真作品は2月22日から28日まで代官山蔦屋書店内のT-SITE「ファッション写真」エリアにて展示されます。この革作品は一点ものなので販売予定はありませんが、もし反響があれば、革アクセサリー商品化など展開があるかもしれません。是非お立ち寄りくださいませ。まだまだ落ち着かない世の中ですが、自分らしいクリエイションを想像し、つくること楽しみながら!新しいものづくりをこれからも皆さんに提案してゆきたいです。
leather design:TOMOE SHINOHARA, art direction:MACHI KAGAWA, photos : SAYUKI INOUE, coiffure et maquillage : RYOJI INAGAKI (maroon brand), model : ELLA (BRAVO MODELS), retouch : KANAKO SATO (VITA INC.), video : MITSUO ABE, collaboration : STUDEO, HASHIMOTO INDUSTRY, AKIRA HARAKAWA
texte:TOMOE SHINOHARA
1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。歌手・ナレーター・女優活動を通じ、映画やドラマ、舞台、CMなどさまざまな分野で活躍。現在はイラストレーター、テキスタイルデザイナーなど企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしても松任谷由実コンサートツアー、嵐ドームコンサートやアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。
篠原ともえ公式サイト:www.tomoeshinohara.net
公式インスタグラム:www.instagram.com/tomoe_shinohara/