うつわディクショナリー#20 うつわって気持ちいい!松本かおるさんが教えてくれること
うつわディクショナリー 2017.11.21
スムースな土の手ざわりにハッとして
赤茶、ベージュ、ブラウン……、松本かおるさんの作品は、自然界に存在する土の色をそのままうつわの形にしたもの。焼物が自然界と繋がっていることを感じながら、日常的に使えるモダンなデザインが魅力です。
—松本さんのうつわは、地層の断面に見られるような綺麗な土の色がそのままうつわになってしまったような作品ですね。この色の秘密は?
松本:この色はすべて、岡山県の伊部(いんべ)という町で古くから作られている備前焼の土がもたらすものなんですよ。この地域の土は、採れる場所によって、赤っぽかったり、黄色味が強かったり色味が違うんです。私は、その土を成形して乾燥させて窯で焼く焼締めというシンプルな技法でうつわを作っています。釉薬を使わないので、土そのもののマットな質感がそのままうつわになります。
—備前焼というと、厳かな壺とか花瓶を思い浮かべてしまうのですが……。
松本:伝統的な備前焼は、緋色(ひいろ)といって炎の流れを感じさせるような力強い表現を鑑賞することを楽しむ焼物でもありますから、そういうイメージかもしれませんね。でも私は、備前焼を初めて見た時から、そういう力強さや渋さというよりも、柔らかい土の色にひかれてしまったんです。備前の土はとてもきめが細かく、スムース。その気持ち良さをそのまま焼物にできれば、女の人も使いたいと思う綺麗でモダンな土のうつわが作れるのではないかと思ったんです。
—本当にそうですね。手にとると見た目以上に滑らかで指先に吸いつくような感覚です。
松本:私は、土をうつわの形に成形した後、ろくろの上だけでなく、手そのものを使ってなんども削り表面を薄く滑らかにしていきます。乾燥させた後も、焼く直前にひとつひとつ手に包んで、手のひらや指でなでてみたり。人の手に馴染むものを生み出すのは、やっぱり手なんですよね。
—土の色ではない黒のシリーズは、どうやって作るんですか?
松本:黒いものは、匣(さや)という耐火度の高い入れ物にいれてもみ殻と炭で隙間を埋め密閉し、酸素を遮断した状態で焼くことで生まれます。炭化といって炭を作る時のような原理ですね。もみ殻や炭のかかり方、密閉具合によって一面黒ではない景色が生まれます。
—焼くときに出る自然な色ムラというわけですね。幻想的なイメージもあって美しいです。
松本:うつわが土から生まれていることを感じながら、その色に合わせて好きな料理を盛りつけてほしいですね。
—松本さんは、以前は、ファッションや食の世界で仕事をしていたそうですね。
松本:そうなんです。PRの仕事をしていましたが、趣味ではじめた陶芸が思いのほか面白くて。会社を辞めて岡山の焼物の学校に入り、そのまま、備前焼の作家・星正幸さんのところで修行しました。食事にまつわることは、昔からとても大切にしていましたし、なによりも私自身が料理をしてうつわを使うのが大好きで。だから作るのもとても楽しいんです。作ったものは必ず自分で試して、サイズや形、持った時の感じ方を調整していきます。
—和にも洋にも、エスニックやメキシカンにも合ううつわですよね。中でもマグカップは、持ち手が細いのに感動的に持ちやすい。
松本:マグカップは、手に近いうつわなので作るのが楽しいアイテムでもあります。私は一本指でカップに手をかけるんですよね。だから、細くて小さい持ち手が好きなんです。
—どんなうつわを作りたいと思っていますか?
松本:備前の土で作るうつわは、高温でよく焼きしまっているので料理がしみることも少なく、軽くて丈夫。多孔質なのでカップに入れたビールの泡がきめ細かくなったり、お酒やお水も美味しくなるんです。だからこそ、料理好きの人が毎日楽しめるものを作っていきたいですね。
松本:備前の土で作るうつわは、高温でよく焼きしまっているので料理がしみることも少なく、軽くて丈夫。多孔質なのでカップに入れたビールの泡がきめ細かくなったり、お酒やお水も美味しくなるんです。だからこそ、料理好きの人が毎日楽しめるものを作っていきたいですね。
※「イコッカ」では11/23(木・祭)まで「松本かおる 黒の景色」展を開催中です。
今日のうつわ用語【焼締め・やきしめ】
釉薬をかけずに高温で焼成する焼物。日本六古窯の備前焼などで知られる。備前の土は、特にきめが細かく高温で焼ける性質のため、薄くひいても軽くて丈夫なうつわに仕上がるそう。
同じ形でもひとつひとつ土の表情が異なるマグカップ¥5,400/イコッカ
リムの広いスープボウルは、ポタージュやポトフはもちろんサラダなどにも。¥7,560/イコッカ
マットな質感と鮮やかな色味がエスニックな献立にもよく合う浅鉢¥7,560/イコッカ
きめの細かい備前の土は、ビールやお酒、お水をまろやかに美味しくする。ビアマグ¥5,400/イコッカ
土の色のグラデーションが美しい花器には可憐な草花を。花器¥4,320/イコッカ
大人気の楕円皿は、取り皿としてちょうどいいサイズ感。楕円皿¥4,644イコッカ
【PROFILE】
松本かおる/KAORU MATSUMOTO
工房:長野県長野市
素材:陶器(備前土)
経歴:セレクトショップ、レストランのPRを経て、陶芸家になるべく単身岡山へ。備前陶芸センターで焼物を学んだのち、備前焼の作家・星正幸さんに師事し独立。現在は、長野に暮らしながら、備前粘土を用いて焼締めの陶器を制作する。
http://matsumotokaoru.com
イコッカ
東京都渋谷区恵比寿南1-21-18 圓山ビル2F
Tel. 03-5721-6676
営業時間:12時〜19時
定休日:日、第2・第3月曜
http://www.ekoca.com
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを
『松本かおる 黒の景色』開催中
会期:2017年11/18(土)〜11/23(木・祭)
会期中無休
松本かおる/KAORU MATSUMOTO
工房:長野県長野市
素材:陶器(備前土)
経歴:セレクトショップ、レストランのPRを経て、陶芸家になるべく単身岡山へ。備前陶芸センターで焼物を学んだのち、備前焼の作家・星正幸さんに師事し独立。現在は、長野に暮らしながら、備前粘土を用いて焼締めの陶器を制作する。
http://matsumotokaoru.com
イコッカ
東京都渋谷区恵比寿南1-21-18 圓山ビル2F
Tel. 03-5721-6676
営業時間:12時〜19時
定休日:日、第2・第3月曜
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『松本かおる 黒の景色』開催中
会期:2017年11/18(土)〜11/23(木・祭)
会期中無休
photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA
ライター/ 編集者
子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/
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