うつわディクショナリー#28 なんでもないのに新しい角掛政志さんのうつわ
うつわディクショナリー 2018.04.25
料理を引き立て、お茶の時間を美味しくするうつわ
独特のツヤを持つ白いポットやプレート、食材の色を引き立てる黒い鉢や大皿。
なんでもないように見えて、盛り付けるとうつわの存在感もきちんとあって。
角掛さんのうつわは、料理やお茶とすんなりと交わって食する時間を良きものにする。

—角掛さんの作品は、料理やお茶を引き立てながら決して脇役に徹しない存在感があります。
角掛:料理を引き立てるうつわと言ってくれる方が多くて嬉しいですね。だけど僕自身は、とにかく作るのが楽しくて、作り続けるうちにそういうものができていったという感じなんです。
—かたちや色は、どのように発想するのですか?
角掛:これも頭の中に明確なイメージがあるというよりは、ろくろをひいているうちに決まっていくというんでしょうか。ポットひとつとっても、ひいていくうちに「これくらいがいいかな」と感じられるポイントがあって、そこで手を止めるという感じです。
—ポットはいくつかシリーズがあって、それぞれに個性があるからいくつも欲しくなります。
角掛:自分の中でいいと思ったかたちでも、実際に使ってみると案外注ぎにくかったり、傾けた時に蓋がはずれやすかったりなど、小さな改善点が見えてきて、販売できない失敗作もこれまでたくさん生まれました。いまここにあるのは、そうやって試行錯誤する中で作品になったものなんです。作るたびに微調整をしていくので、使いやすさは日々進化していっていると思います。
—例えば菜箸立ては、ありそうでなかった手作りの品ですね。新しいかたちはどんな風に生まれるのですか?
角掛:お店やギャラリーの方の要望に応えるかたちで取り組んでみることが多いですね。好評の菜箸立ては「千鳥 UTSUWA GALLERY」の店主の柳田栄萬さんのリクエストで生まれました。個展のたびに、カトラリー立てやペン立てという風にバリエーションが増えて、新色にも挑戦するので、これを目当てに足を運んでくれるお客様も増えました。嬉しいですね。
—白と黒は「角掛カラー」といってもいいくらいオリジナルなツヤと手触りを持ちます。
角掛:うつわに限らずツヤのあるものが昔から好きなので、焼物でもそういう質感ができないだろうかとやってきました。白いうつわの黒いつぶつぶは、土の中の鉄分が顔を出して生まれたもの。黒いうつわの小さく細いつぶつぶは、土の中の長石という成分が顔を出して生まれたものです。真っ白、真っ黒ではなく、焼物ならではの予期せぬ変化を併せ持つものが好きですね。
—土の中の成分が作用して装飾となるのですね。
角掛:土をどう作るかによってうつわの表情は変わります。焼物の土は、水樋(すいひ)といって、水に溶かして小石などを沈殿させ不純物を取り除くことできめ細やかにするのですが、あまり取り除きすぎると均一で面白くないものになってしまう。どれくらい残すのかという頃合いには気を配っているかもしれません。僕の住んでいる常滑は、日本六古窯のひとつで焼物に適した土が豊富にあります。黒いマットな質感のうつわは、家の敷地内で掘った原土をベースにしているんですよ。
—まさに足元にある土から生まれるうつわなんですね。
角掛:この土を使うならマットな質感に仕上げたほうがかっこいいのではないかと思ったので、釉薬の選び方や焼き方もそれに合わせていきました。
—どんなものを作りたいですか?
角掛:常滑は、ついこの間、といっても20年位前までは、高度経済成長期に栄えた土管や衛生陶器をつくる大規模な工場があったのですが、時代の波とともになくなったり縮小されたりしていきました。いまはかつて工場だった物件を借りて個人で作陶する人が増えています。窯業地にいるからこそ、身近にある土に目を向けて、その土を活かしながら毎日使ってもらえるものを作っていきたいと思います。
※2018年4月28日まで「千鳥 UTSUWA GALLERY」にて「角掛政志展」を開催中です。

今日のうつわ用語【日本六古窯】
日本で古来より続く陶磁器窯のうち、中世(平安時代)から現代まで続く代表的な6つの窯。瀬戸、常滑、丹波、備前、越前、信楽を指す。
【PROFILE】
角掛政志/MASASHI TSUNOKAKE
工房:愛知県常滑市
素材:陶器
経歴:会社勤めののち趣味で始めた陶芸教室を経て、瀬戸、常滑、京都、信楽など日本各地の窯業地を旅する。常滑市立陶芸研究所で焼物を学び、卒業後工房をスタート。
千鳥 UTSUWA GALLERY
東京都千代田区三崎町3-10-5原島第二ビル201A
Tel. 03-6906-8631
営業時間:12時〜18時
定休日:不定休(定休日はHP、ブログで確認のこと)
http://www.chidori.info
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを
『角掛政志 陶展』開催中
会期:2018年4/21(土)〜4/28(土)
角掛政志/MASASHI TSUNOKAKE
工房:愛知県常滑市
素材:陶器
経歴:会社勤めののち趣味で始めた陶芸教室を経て、瀬戸、常滑、京都、信楽など日本各地の窯業地を旅する。常滑市立陶芸研究所で焼物を学び、卒業後工房をスタート。
千鳥 UTSUWA GALLERY
東京都千代田区三崎町3-10-5原島第二ビル201A
Tel. 03-6906-8631
営業時間:12時〜18時
定休日:不定休(定休日はHP、ブログで確認のこと)
http://www.chidori.info
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを
『角掛政志 陶展』開催中
会期:2018年4/21(土)〜4/28(土)
photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

ライター/ 編集者
子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/
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