うつわディクショナリー#30 黒川登紀子さんのガラスのパレット

テーブルをキャンバスに、ガラスのパレットで彩る

ガラス作家の黒川登紀子さんは色ガラスをあやつりテーブルをカラフルに彩る。
ガラスというとサラダやフルーツを思い浮かべるけれど、
スモーキーなグレーやグリーン、ネイビーは、肉や魚料理とも相性がいい。
 
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—黒川さんの作品は、カラフルで見ているだけで晴れやかな気持ちになります。
黒川:ガラスにはクリアなものと色を使ったものがありますが、色ガラスの材料には、本当にたくさんのカラーバリエーションがあって楽しいんです。私が使っているのは、ニュージーランドのメーカーのもの。ここの色は全部で127種類あって、その中から、好きな色を選んでストックしています。定番のうつわには、ブルーグレーやホワイト、レッドなどを。個展の時には、そのお店の雰囲気に合わせて色を追加します。今回は、ピスタチオというグリーンを取り入れました。
 
—空間の雰囲気によって、選ぶ色を変えるということですか?
黒川:私は、ガラスを作る時、それが空間にどう置かれるかということを想像しながら作っているんだと思います。今回の個展会場「ドワネル」は、お店に向かう道すがらに目に入る鮮やかな緑がとても印象的で。自然光がやわらかく差し込むお店なので、クリアなガラスが綺麗に見えるだろうなあということも想像しました。そこで、色はグリーン系を豊富に、かたちは、クリアガラスの中でも縦のラインが映えるピッチャーやボトルを制作しました。
 
—色ガラスとクリアガラスの違いは?
黒川:色ガラスは、無色透明のガラスを金属の酸化物で着色したもの。棒や粉の状態で材料として販売されています。私は、小さく切った色ガラスを溶かして息を吹き込み、そのまわりをクリアガラスで覆う方法で作っています。
 
—作る時には、どんなことに気を配っていますか?
黒川:クリアガラスの場合は、ガラスの肉厚が綺麗にでるラインを、色ガラスの場合は、面が美しく見えるように意識していると思います。クリアガラスのボウルやプレートには、縁の部分にだけ色をのせてラインを強調することも多いですね。私が作るのは、うつわなんですけど、使うものを作るということ以前に、色の楽しさを生活の中に提案するという気持ちが強いのだと思います。
 
—それは、なぜですか?
黒川:テーブルを色でコーディネートするのが、好きだからかもしれません。作品ができあがると、白いクロスをテーブルに敷いてうつわを並べていくんです。この色にはこんな料理が合いそうとか、こんな色があったらいいから作ってみようとか、置く場所を変えたり、重ねたりしながらあれこれやってみる時間がとても好きなんです。作ることのインスピレーションになっています。
 
—黒川さん自身が色使いをとても楽しんでいますね。でも制作を休んでいた時期もあるとか?
黒川:ガラス制作というのは、炉の火を完全に落としてしまうと再開に時間がかかるため、一度制作を始めたら、定期的なメンテナンス以外は、365日、火をつけ続けなくてはならないんです。私は子育てが始まったのを機に一度火を落としました。再開する2013年まで、12年間お休みしたんです。ゆっくり時間を取った分、やりたいことのアイデアが蓄積されて、いまのような色ガラスが生まれました。
 
—やりたいこととは、具体的にはどんな表現ですか?
黒川:落ち着いた色を使うことも多いですが、ものとしては、どこかに強さがあるというか、存在感のあるうつわを作ることですね。
 
—存在感があると同時に、テーブルの木の天板や陶器ともよく合ううつわですね。
黒川:私の家には木の家具が多くて、北欧のインテリアも好きなので、自然とそういう空間に合うものができているのかもしれません。クリアガラスのコーヒードリッパーとたっぷり入るカップを使ってコーヒーを淹れたり。自分の作品は、生活の中でよく使っています。
 
—どんなものを作りたいと思っていますか?
黒川:シンプルだけど、色あそびができて楽しいものを作っていきたいです。
 
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今日のうつわ用語【ガラス】
ガラスは、ケイ砂、ソーダ灰、石灰石、ホウ酸などの原料とし高温で溶かし冷却したもので無色透明。色ガラスは、ガラスに、マンガン、ニッケル、クロム、チタンなど金属の酸化物で着色したもの。
 
【PROFILE】
黒川登紀子/TOKIKO KUROKAWA
工房:香川県高松市
素材:ガラス
経歴:東京ガラス工芸研究所にてガラス制作を学んだ後、香川のガラス工房に勤務。1999年吹きガラス工房glass bee studioを設立。2001〜2012年産休育休を経て2013年より制作を再開する。

ドワネル
東京都港区北青山3-2-9
Tel.03-3470-5007
営業時間:12時〜20時
休日:水
http://doinel.net
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『黒川登紀子 水を楽しむ 色を楽しむ』開催中
会期:2018年5/18(金)〜5/29(火)
✳2018年5/21時点で在庫はクリアの作品のみ

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

ライター/ 編集者

子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/

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