うつわディクショナリー#34 懐かしくてやさしい、花岡央さんのうつわ

夏のガラスのノスタルジア

まるで夏祭りの提灯のように丸く膨らんだガラスのうつわ。色味を抑えてシックにまとめたボウルや片口は、夕涼みしながら楽しむ食事にもぴったり。手持ちの焼物ともよく合います。ヒロイグラススタジオ・花岡央さんが織りなす懐かしくてやさしいガラスの世界へようこそ。
 
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—ストライプ柄の片口や酒器、ボウルなど、どれも涼しげですね。でもあまり見たことのないガラスの表現のような気がするのですが。
花岡:ガラスの表面にカットを施す切子の技法を応用して作っています。透明なスリットがあることで、例えばグラスだったら、ガラスの色も、合間から見える飲み物の色も楽しめる。どこにおいても表情豊かに感じられるガラス器を作りたかったんです。
 
—ストライプの合間から、チラッと見えるのがいいですね。
花岡:そう、まさにチラリズム。日本の古民家の扉や窓に見られる縦格子の「連子(れんじ)」をイメージして「REN (レン)」と名づけました。昔から格子戸や雑木林のように、縦の線が規則正しく並んでいる姿が好きなんですよね。僕が材料として使うのは、外国製のガラスなのですが、備前焼のある岡山に育ったこともあって日本らしいものへの憧れがいつもどこかにあったんです。RENを作ったことで、日本の文化と自分のものづくりの間に接点を感じながら、制作することができるようになりました。
 
—花岡さんといえば、抜群に切れのよい片口も人気の品。料理家の方も愛用するほどです。
花岡:よく使っていただいて嬉しいです。片口は、切れよく完成させるのに本当に時間がかかりました。きっかけは、使ってくださったお客様からの「とても綺麗なんだけど、注いだ後に一滴垂れてしまうのが残念」という言葉だったんです。どうしよう、って悩みました。切れのよいものとそうでないものはどう違うのか、陶器でもなんでも口のついているものをとにかくたくさん見て研究して、作っては試しての繰り返し。そのお客様にも何度か意見をうかがって。いまでは、職人的な感覚で切れのよい口をかたちづくれるようになりました。
 
—理想に近づけるために、とにかく何度も作るんですね。
花岡:独立してからは、すべてひとりで作っています。グラスにフット(台座)を合体させる時など、アシスタントの手があると助かるのですが、ひとりでやるしかない。その中でどう美しく作るかというのは、数をこなすことで身につけてきたと思います。自分でいうのもなんですが、ワイングラスは、どんどん綺麗なフォルムになってきていると思うんです。「ちょっとだけ飲みたいのよね」という方の要望に応えて小ぶりなサイズを作ったら「冷酒にもちょうどよい」というお客様もいて、意外な発見でした。
 
—そのワイングラスをはじめ、ブルーのガラスには秘密があるとか。
花岡:実は、淡いブルーは、お米が溶け込んだものなんです。実家が米農家なんですが、天候の影響で出荷できない未熟米がたくさん出てしまった時に、父がとても落ち込んでいて。何かできないかとガラスの発色原料のひとつとして試してみたところ、いい色だなあと思いました。溶け方によって青の色味や気泡の量が異なるんです。
 
—お米由来の片口とお猪口で日本酒なんて、なんとも粋ですね。
花岡:GLASS(グラス)とRICE(ライス)をかけて「GRICE(グライス)」と名づけました。片口やお猪口に日本酒が入ると、揺らぎがあって綺麗ですよ。ワイングラスやデザートグラスは、飲物の色を楽しみたいので、フットにだけ色をいれています。
 
—どんなものを作りたいと思っていますか?
花岡:うつわをすでにたくさん持っているという方も多いと思います。僕のうつわは、個性があるほうだと思うので、いっぱいに詰まった食器棚の中のお気に入りのひとつになれたらいいですね。毎日でなくても、週に1度、月に数回のちょっと特別な時に使い、ずっと大切にしたいと人の心をとらえるようなものを作っていけたらと思います。
 
※2018年8月2日まで「ヒロイグラススタジオ 夏のガラス展」を開催中です。
 
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今日のうつわ用語【切子・きりこ】
ガラス容器の表面を研磨して稜角をつけたもの。江戸末期に江戸や薩摩で生産され、その技術がいまに伝わる。カットグラスとも。
【PROFILE】
花岡央/HIROI HANAOKA
工房:岡山県備前市
素材:ガラス
経歴:倉敷芸術科学大学ガラスコースにて小谷真三氏に師事ののち、ガラス工房「fresco」に入社し辻野剛氏に師事しながら、チーフとしてfrescoブランドの製品のデザイン、制作、教室指導を行う。2013年地元に戻り「ヒロイグラススタジオ」設立、ギャラリーも併設する。1982年生まれ。

TENOHA &STYLE STORE
東京都渋谷区代官山町20-23 TENOHA DAIKANYAMA
Tel. 03-5784-0741
営業時間:11時〜20時
定休日:会期中無休
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『ヒロイグラススタジオ 夏のガラス展』開催中
会期:2018年7/6(金)〜8/2(木)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

うつわライター/編集者

フィガロ編集部を経て独立。子育てをきっかけに家族の食卓に欠かせないうつわにはまり、作り手を取材する日々。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らし関連の記事を執筆。著書に『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)。Instagram:@enasaiko

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