白い粉雪舞うウッチ、朝露に包まれたヴロツワフ。

arimoto-manakonitsubasa-01-230417.jpg

窓の向こうに見えるのは紡績業で財を成し、19世紀にこの町の産業発展の立役者となったポズナンスキー家の元邸宅。現在は歴史博物館。

vol.1 @ポーランド

その朝、寝ぼけ眼で部屋のカーテンを開けると、窓の外には青白い世界が広がっていた。通りの向こうを黄色いトラムが走り抜ける。雪化粧を纏ったウッチの街はいつにも増してフォトジェニックだ。ここはポーランド映画が生まれ出る場所。アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキー、イエジー・スコリモフスキなどの名監督を輩出したウッチ映画大学があり、ウッチの各所が映画のロケ地になることも多いという。私の大好きな一本『COLDWAR あの歌、2つの心』も、たくさんのシーンがウッチのあちらこちらで撮影されたと知り、主人公の姿を思わず探してしまった。

ヴロツワフでは日が昇るよりも前に目覚めたので、薄暗い中散歩に出かけた。ピリッと肌が引き締まるような寒さ、オドラ川に沿って歩いてみる。橋を渡ると、対岸の宮殿のような大きな建物に目を奪われる。それがヴロツワフ大学の校舎だと後で知って驚き、美しい学舎に通う学生たちが羨ましく思えた。いま夢中になっている一冊、『逃亡派』。著者のオルガ・トカルチュクはこの街の郊外に住んでいるそうだ。それだけでもヴロツワフには魅惑的な何かがあるような気がしてならない。彼女の文章を、探ったり眺めたり触れたり、街を彷徨い歩くような感覚で読んでいる。

---fadeinpager---

arimoto-manakonitsubasa-02-230417.jpg

ウッチ映画大学はポーランド的美学が凝縮された数々の映画の原泉とも言える。卒業生の映画監督、撮影監督、俳優は世界を舞台に活躍している。

arimoto-manakonitsubasa-03-230417.jpg

ヴロツワフは川と橋の街。宮殿のような建物は現役のヴロツワフ大学の校舎。

『COLD WAR あの歌、2つの心』
監督/ パベウ・パブリコフスキ
2018 年、ポーランド・イギリス・フランス合作映画
88分
Amazonプライム・ビデオ、YouTubeなどにて配信中 
『逃亡派』 オルガ・トカルチュク著 
白水社刊 ¥3,630

>>「在本彌生の、眼(まなこ)に翼」一覧へ

取材撮影協力:ポーランド政府観光局

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
コスチュームジュエリー
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.