奄美の自然と人々が育み生み出すもの。

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奄美大島の南に寄り添う加計呂麻島の夜空。島尾敏雄が特攻隊長として赴任し、教師をしていたミホさんと出会った島。

vol.3 @奄美大島

私が初めて奄美大島を旅したのは20年近く前。映画『死の棘』をビデオで観たのをきっかけに原作に触れ、人の心の深さ、恐ろしさ、愛のかたちのさまざまを読むごとに擦り込まれるようで、その重みが腹の底にずっしりと残って離れなかった。作者の島尾敏雄一家が長く暮らした島、妻のミホさんの故郷でもある奄美は一体どんなところなのかと興味を持ち、ふらりと出かけたのだった。

鬱蒼とシダの生い茂る原生林をハブも恐れずひとりで歩くと、自然に全方位から包み込まれるようでなんとも気分がよく、時代や場所から切り離されるような開放感で、いくらでもここにいたいと思った。生気に満ちた林に自分の中に潜んだ野生が呼び覚まされたとでも言おうか、少し生まれ変わったような気さえした。不思議な、心地よい体験だった。

それ以来再訪できていなかった奄美だったが、島に移住した画家・絵本作家のミロコマチコさんのライブペインティングを撮影するようになったのを機に、ここ数年頻繁に訪れるようになった。彼女の描くさまは、生き物が生まれ出る一部始終を見届けるセレモニーさながら、ミロコさんは全身で絵の中に潜り込み一体化していく。その目撃者になり、撮影するのは写真家冥利に尽きる時間だ。森の中にキャンバスを設えて描く彼女を撮影した。完成した絵が時間の経過とともに森の一部となっていった感激は忘れがたい。ミロコさんのお陰で奄美との縁が復活しうれしい限りだ。

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加計呂麻島から見た夕焼け。

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大島は美しい海や浜だけでなく清流にも恵まれた場所。島尾敏雄は小説だけでなく、島の風習や土地について丹念にフィールドワークし、興味深いエッセイも多数残している。

●『死の棘』
監督/小栗康平
1990年、日本映画 118 分
U-NEXT で配信中 

●『けもののにおいがしてきたぞ』
ミロコマチコ著 ¥1,760
岩崎書店刊 

●『新編・琉球弧の視点から』
島尾敏雄著 絶版

>>「在本彌生の、眼(まなこ)に翼」一覧へ

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

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