クイーンのフレディ・マーキュリーの終の住処、ガーデンロッジを訪ねて。

写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はイギリス・ロンドンの旅。

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閑静な住宅街の中でも、一際大きな屋敷がフレディがプライベートな時を過ごしたガーデンロッジ。夥しい数のファンレターやメッセージ、手向けられた花たちが、あたかも品よくディスプレイされているかのように絵になっていた。ひとりでここに訪れる人は多く、私の隣にいたアジア系の青年は、ヘッドホンで曲を聴きながら家の扉を静かに眺めていた。

ロンドンのボーラーハットとチューリップ。

vol.21 @ イギリス・ロンドン

遠く感じるのに、自分の好きなものと何かしらが繋がっている、ロンドンは私にとってそんな「偉大な街」だ。行けば見たいものやりたいことがありすぎる。

ある年の新緑と花の盛りの頃、ロンドンを訪れた。ちょうど、ケンジントンにあるデザインミュージアムで敬愛するスタンリー・キューブリックの大回顧展が開催中だと知り、真っ先にチケットを予約し会場に向かった。ロンドンを舞台にした大傑作『時計じかけのオレンジ』をはじめ、映画にまつわる展示だけでなく、写真家時代の写真作品が多数公開されていたのがうれしく、対象に対する彼の視点と、絵作りの巧みさに改めて感じ入った。

もうひとつ、どうしても行きたかった場所が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもおなじみ、クイーンのフレディ・マーキュリーが全盛期から最期までを過ごした家、ガーデンロッジだった。自分と身近な人が安らげる究極の家を見つけ、自らの手で細部まで作り上げたというフレディが、曲を作りながら、恋人と暮らしながら、日頃見ていた光景を垣間見たかったのだ。閑静な住宅街の中、ちょっとした人だかりが見えてくる。そこがガーデンロッジだった。高い塀があるので中までは見えないが、ファンたちが彼に語りかけ、メッセージを残していく。手向けられた花束の数々で、街路は華やかに彩られていた。西陽に浮かび上がるしおれた花々の麗しさを、フレディも気に入っているのではないだろうか。

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ケンジントンの住宅街は花盛りで、薄紫の藤の花が白い壁を見事にデコレーションしていた。
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デザイン・ミュージアムにほど近いホランドパークにて、白い花がじゅうたんのように足元を埋め尽くしていた。
『時計じかけのオレンジ』
スタンリー・キューブリック 
1971年、アメリカ映画 137分
Amazon Prime Videoにて配信中

『ボヘミアン・ラプソディ』 
監督/ブライアン・シンガー 
2018年、アメリカ映画 135分 
Amazon PrimeVideoにて配信中


*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

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