クイーンのフレディ・マーキュリーの終の住処、ガーデンロッジを訪ねて。
在本彌生の、眼に翼。 2024.10.11
写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はイギリス・ロンドンの旅。
ロンドンのボーラーハットとチューリップ。
vol.21 @ イギリス・ロンドン
遠く感じるのに、自分の好きなものと何かしらが繋がっている、ロンドンは私にとってそんな「偉大な街」だ。行けば見たいものやりたいことがありすぎる。
ある年の新緑と花の盛りの頃、ロンドンを訪れた。ちょうど、ケンジントンにあるデザインミュージアムで敬愛するスタンリー・キューブリックの大回顧展が開催中だと知り、真っ先にチケットを予約し会場に向かった。ロンドンを舞台にした大傑作『時計じかけのオレンジ』をはじめ、映画にまつわる展示だけでなく、写真家時代の写真作品が多数公開されていたのがうれしく、対象に対する彼の視点と、絵作りの巧みさに改めて感じ入った。
もうひとつ、どうしても行きたかった場所が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもおなじみ、クイーンのフレディ・マーキュリーが全盛期から最期までを過ごした家、ガーデンロッジだった。自分と身近な人が安らげる究極の家を見つけ、自らの手で細部まで作り上げたというフレディが、曲を作りながら、恋人と暮らしながら、日頃見ていた光景を垣間見たかったのだ。閑静な住宅街の中、ちょっとした人だかりが見えてくる。そこがガーデンロッジだった。高い塀があるので中までは見えないが、ファンたちが彼に語りかけ、メッセージを残していく。手向けられた花束の数々で、街路は華やかに彩られていた。西陽に浮かび上がるしおれた花々の麗しさを、フレディも気に入っているのではないだろうか。
スタンリー・キューブリック
1971年、アメリカ映画 137分
Amazon Prime Videoにて配信中
『ボヘミアン・ラプソディ』
監督/ブライアン・シンガー
2018年、アメリカ映画 135分
Amazon PrimeVideoにて配信中
*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋
Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。