2021年、世界中から注目を浴びたドイツ人女性といえば、エリザベス・ザイツではないだろうか。名前はわからなくても、写真を見たらピンと来る人も多いはず。そう、東京オリンピックで足首まで覆う「ユニタード」を着用して話題を呼んだ、ドイツ代表の体操選手のひとりだ。12月4日には、ドイツ体操選手・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。
「私たちはレオタードを止めたいわけではないんです。ユニタードというもうひとつの選択肢を作る。誰もが着たいものを着たい時に着ることができるようにしたい。何よりもいちばん大事なのは、自分が心地よくいられること。体操の時もそうあるべきです」。「It’s my choice」という運動をスタートしたきっかけについて、ザイツは自身のホームページでこう語っている。
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東京オリンピックでのエリザベス・ザイツ。惜しくもメダルは逃したが強いインパクトを残した。photo: Tom Weller / 24passion
そもそも国際体操連盟はユニタードを禁止しているわけではない。しかしこれまで、女性選手が居心地の悪さを感じていたにも関わらず、レオタードの方が美しい、いいものとされて彼女たちの意思に反して着用が勧められてきたのである。女性選手たちは競技に集中したいのに、レオタードのわずかなズレにまで注意を払わなければならない。特に生理の時などは気を使うという。
ザイツたちのユニタード姿は、世界中に波紋を呼んだ。ビーチバレーのヨーロッパチャンピオンのひとり、キラ・ヴァルケンホルストも、ビキニ着用を強要された自分の体験について、スポーツ界における性差別について声を上げた。これまで、なんとなくそういうものだからと見過ごされてきた、ちょっとした違和感を見直す動きが生まれつつある。スポーツ界におけるエンパワメントに今後も注目していきたい。
ドイツ体操選手・オブ・ザ・イヤーに選ばれたエリザベス・ザイツのインスタグラムより。
河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau