文・写真/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
ニューヨークの夏といえば、野外コンサートやアウトドアムービーなど、たくさんのイベントが開催されるが、残念ながら今年は新型コロナウイルスの影響で、すべてキャンセルに。本来なら7月初旬からレストラン屋内での食事も許可されるはずだったが、感染拡大を懸念して、延期になった。代わりに新しく登場したのが「オープンレストラン」だ。
ニューヨーク市が、レストランの屋外スペースである歩道や車道の一部を使用して営業することを許可した。天蓋を備えたり、木材で簡易的な仕切りを設置したり、または単にテーブルと椅子を並べるだけのところなど、その工夫はお店によってさまざまだ。今年の10月末まで、このシステムが導入される。パンデミックによる厳しい経済状況のなかでも、少しでもテーブルの数を確保できることは店にとってもうれしいし、外食好きのニューヨーカーにとってもうれしいことだ。スターシェフのダニエル・ブリューが手がける高級レストラン「ダニエル」も、アウトドアでの料理提供を開始した。


ヤシの木で飾り、車道の一部を思いっきり利用した、ペルー料理のレストラン「ベイビー・ブラサ」。


左:屋外にテーブルを11卓ほど設置したメキシカンレストランの「マサ・コヨヤカン」(右)と、立派な天蓋ですっぽりテーブルを雨や日差しから守ってくれる、野菜にフォーカスしたアメリカンの「コンコード・ヒル」(左)。右:オーストラリア系カフェ「ルビーズ」は照明も設置。テーブルとテーブルの間には、薄い透明の仕切り板を設置して、飛沫を防止。
パラソルが設置されていなかったり、大通りの車道に面していると、若干の抵抗があるが、そよ風が吹く夕暮れ時のテラス席は気持ちが良い。ニューヨークと言えば、厳しい冬のイメージがあるが、夏もとても暑い。普段なら冷房の効いた映画館や美術館、ホテルのルーフトップバーなどで、暑さをしのぐことができるが、大型施設やホテルのバーはまだ再開していない。オープンレストランは、現在のニューヨークで楽しめる、数少ない娯楽のひとつだ。夏にはハンプトンの別荘に脱出するニューヨーカーが多いが、市内で過ごす人にとっては、新しい夏の風物詩として定着しそうだ。
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texte et photos : AZUMI HASEGAWA