世界は愉快:朝ごはん編 from ロンドン イギリスでみんなが大好き「エッグ&ソルジャーズ」

世界は愉快 2020.08.20

文・写真/坂本みゆき(在イギリスライター)

イギリスの朝ごはんと聞いたら、文字どおり「イングリッシュブレックファスト」を思い起こす人が多いかもしれない。

目玉焼きやスクランブルエッグの卵料理と、ベーコン、ソーセージ、インゲン豆を甘いトマトソースで煮たベイクドビーンズ、ソテーしたマッシュルームやトマトなどを一皿にこんもりとのせたボリュームたっぷりの朝ごはんだ。

でも調理にも食べるのにも時間がかかるから、日頃から自宅でこれを習慣とする人はいまではあまりいないんじゃないんだろうか。仮に家で作ってもお休みの日の朝など、時間にゆとりのある時だと思う。むしろ大多数のイギリス人にとって「イングリッシュ・ブレックファスト」は、現在では自分の家よりもグリーシースプーンと呼ばれる大衆食堂やカフェで食べるものとなっていると感じる。

では何を食べているかというと、慌ただしい朝は他国と同様にシリアルやグラノーラでさっと済ます人がほとんどだと思う。でも、それらよりもイギリスらしくて、「イングリッシュブレックファスト」ほど手間がかからない朝ごはんの定番に「エッグ・アンド・ソルジャーズ」がある。

これは黄身が流れ出すくらいの柔らかい半熟たまご「エッグ」に、短冊型に切ったトースト「ソルジャーズ」を組み合わたもの。小さな子どもの朝ごはんとして作られることが多いけれども、大人も大好きだ。

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「エッグ・アンド・ソルジャーズ」。ようやく白身が固まったくらいの半熟卵は私の場合、お湯が沸いたお鍋に卵を入れて5分。茹であがったらすぐに冷水で冷ますことも忘れずに。

卵の「エッグ」はともかく、細長いトーストがなぜ「ソルジャーズ(兵隊さんたち)」と呼ばれるのかはわからない。でも同じサイズで切り揃えられてお皿に並べられたさまは、制服を着て整列する兵隊さんっぽいかもしれない。

「エッグ」はエッグカップ(イギリスではこう呼ぶ。エッグスタンドのこと)にのせる。日本の喫茶店のモーニングだと卵がごろんとお皿に横たわって出てくることがあるけれども、固茹でも半熟もイギリスではゆで卵にエッグカップはマスト。特に「エッグ・アンド・ソルジャーズ」にはなくてはならない存在だ。

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楽しいデザインのエッグカップも多い。私はイギリスの陶器ブランドQuail Ceramics の野ウサギ型を愛用中。

そして卵の上部を割る。バターナイフでスパッと切ったり、スプーンでコンコンと叩いてもいいけれども、エッグトッパーなる道具を使うと綺麗にカットできる。

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たぶんイギリスだけでなくヨーロッパの各地ではおなじみのエッグトッパー。シンプルながらも一度使うと楽しくて何度でもトライしてみたくなる。

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下のカップ部分を卵に当てて、上にのびたパイプのてっぺんにあるバネ式のボールを引っ張って離すと、あら不思議。きれいに卵が割れる。

その後は卵にお好みで塩・胡椒を。私の場合はお醤油を数滴(笑)。そこにバターをたっぷり塗った「ソルジャーズ」をディップしていただく。まろやかな卵と塩味の効いたバターの組み合わせはシンプルだけれどもこの上なくおいしい。

「エッグ・アンド・ソルジャーズ」の歴史はそう古くはなく、登場したのは1960年代だとか。現在では、ニワトリの卵の代わりにサイズが大きくて味が濃厚なアヒルの卵を「エッグ」に使ったり、普通のバタートーストではなくアンチョビバターのトーストやグリルしたアスパラガスを「ソルジャーズ」にするアレンジもある。

いつもより10分早く起きた日は、イギリス人を真似て「エッグ・アンド・ソルジャーズ」を朝ごはんにしてみるのもいいかもしれない。

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エッグトッパーで割った殻は、食べたあともなんだか可愛い。

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texte et photos : MIYUKI SAKAMOTO

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