文・写真/鄭慈卿 (在ソウルコーディネイター)
薬食同源の国、韓国では一日のエネルギーの源になる朝ごはんを大切に考えている。朝は、お米派かパン派かをよく語り合うのだが、いまも意外と多くの人がお米派で、なかでもヌルンジと呼ばれるおこげスープが定番メニューのひとつだ。
温度を保つ真鍮のうつわで、ヌルンジを最後までおいしく食べられる。
おこげを少なめにして食後に飲んだり、おこげを多めに入れてお粥風に食べたり。電気炊飯器の登場で、一時おこげが珍しいものになった時代には、私の母が鍋でご飯を炊いてわざわざおこげを作ってくれた覚えがある。現在はおこげモード付きの炊飯器が登場、韓国人のヌルンジに対する愛着を感じたものだ。
作り方は、鍋にお水か麦茶、おこげを入れて沸騰させたら完成。おこげが軟らかくなるよう少しかき混ぜてもよいが、それさえ面倒ならその必要もない。さらに、スーパーやコンビニに行けば、いろんなブランドのものや玄米や黒米などヘルシーな素材を使ったおこげまで簡単に手に入るし、カップヌルンジもある。
ひょっとしたら、シリアルのように見えるかもしれない。1人前ずつになっている既成品のおこげ。忙しい朝は、もう時間をかけておこげを作らなくて済む!
家では干しスケトウダラのスープにおこげを入れて温めたり、卵を溶き入れたりと好みでアレンジをすることもあるが、ヌルンジの本当のおいしさは、おこげの香ばしい匂いとシンプルな薄味。韓国人にとって、ノスタルジックで心癒やされるものだ。この素朴なヌルンジに、キムチやカクテキ、肉の煮付け、塩辛などを添えて食べるほうが、本当の韓国スタイルの朝食といえるだろう。
お腹が空いてるのに食欲がない朝でも、消化に良く、ほっとする味わいのヌルンジを、ぜひお試しあれ。


朝の陽ざしが美しいソウルの朝。ヌルンジは、家で朝食として食べることが多いが、外では韓定食の締めとして出てくるのが定番だ。
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texte et photos : JA-KYUNG JUNG