文・写真/鄭慈卿 (在ソウルコーディネイター)
昔から韓国人の暮らしに深く根付いているエコ素材、黄土をご存じだろうか? かつては、一般家庭のオンドル(床下暖房)、壁、韓国式サウナ「汗蒸幕(ハンジュンマク)」には欠かせないものだった。いまはあまり使われていないと思ったら大間違い!


アトピー肌に黄土ほど良い天然素材はない。全羅南道の潭陽(タミャン)にあるドゥレバク工房では、ファッションやインテリア雑貨に使える黄土の染色体験が人気だ。 photo : ドゥレバク工房
実は、黄土住宅を建てようとする人がどんどん増えている。なぜなら、黄土は人体に良いとされる微生物を多く含んでおり、それらによって排出される酵素がホルムアルデヒドなどの有害物質を遮断するからだ。つまり、シックハウス症候群の心配の少ない素材で、アトピー予防にもなるし、悪臭除去、細菌とカビの抑制、さらには湿度調節などにもその作用を発揮する。そのため、マンション住まいや持ち家がある人には、壁に塗る黄土ペイントが人気だ。黄土ペイントには多彩な色のバリエーションがあって、インテリアの壁紙感覚で取り入れられている。
また、黄土から出る遠赤外線は、血行促進、炎症や痛みを緩和する効果があることで知られている。そのことと関係が深いのが、約600年前から行われてきた温熱療法、韓国伝統のサウナ「汗蒸幕(ハンジュンマク)」だ。いまではチムジルバン(低温サウナのある健康ランドのような施設)として進化し、韓国ならではの存在になっている。
伝統的な黄土サウナ、汗蒸幕(ハンジュンマク)。黄土染めの生地で作られた専用の服を着用して入ることも。
さらには、老廃物を取り除き、健康な肌に整える黄土の成分を生かした化粧品や雑貨もある。とくに私が最近ハマっているのは、中に小豆が詰められた、黄土染めの生地のアイマスク。敏感肌なので、デリケートなまぶたや目の周りの皮膚に直接触れるものは、肌にやさしいものでなければならない。黄土染めの生地なら、電磁波を遮断するといわれるので熱を加えても有害物質が発生しないとされ、電子レンジで温めて使うことができ、安心して使えるだけでなく、目の疲れも取れて一石二鳥。大変重宝している。
黄土の天然染色で作られたアイマスク(写真上)とお腹専用の湿布パック(写真下)。お腹パックは冷え性にも効くし、お腹以外でも痛みのある部位に使える。中に詰められた小豆もまた、解毒と血行促進を助ける効果があるといわれるサステイナブル素材だ。photo : DADAREUM SEWING
ミネラルと有機物が豊富に含まれている五色黄土は、各種汚染物質と老廃物を吸着して除去し、肌の鎮静と保湿に優れた効果を発揮するといわれる。五色黄土の成分が入ったシートマスク。phoho : OSEQUE
ほかにも、黄土染めの生地を使って現代的なデザインに進化させたチマチョゴリや、Tシャツ、ハンカチから、カーテンや寝具まで揃う。そう考えると、黄土は、むしろ昔よりいまの方がもっと幅広く、多くのものに使われ、韓国人に親しまれているといえるだろう。
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texte et photos : JA-KYUNG JUNG