世界は愉快:クリスマス編 from ベルリン 発祥の地ドレスデンの巨大シュトレン祭り。

世界は愉快 2020.12.04

文・写真/河内秀子(在ベルリンライター)

ドイツのクリスマスに欠かせないものといえば、シュトレンだ。イースト生地にドライフルーツやマジパン、ポピーシードなどを練り込んだどっしりした焼き菓子で、ドイツの家庭では1kg~2kgもあるものを買い、アドベント(待降節)と呼ばれるクリスマス前の4週間に少しずつ切り分けて食べていく。

market.jpgその起源には諸説あるが、中世の頃にはすでにシュトレンという言葉が文書に登場していたという。最も有名なものは、東部ドイツの古都ドレスデンで作られている「ドレスドナー・クリストシュトレン」だ。

MG_1020.jpg「シュトレン」といっても種類はさまざま。写真手前が、ドライフルーツたっぷりの「ドレスドナー・クリストシュトレン」。左手にあるのは、ポピーシードを巻き込んだ「モーンシュトレン」。

ドレスデンと近郊でしか作ることが許されておらず、この地でマイスターを取得した製パンマイスターだけが、秘伝のスパイスを分け与えられる。また、毎年行われる公開テストで高得点を取らなければ、金色のお墨付きシールを貼ることも許されない。原材料を粉の量に対して少なくともこれくらい使うという量も決まっていて、バターやラム酒漬けのレーズンやドライフルーツを驚くほど入れる。おくるみに包まれた幼子イエスを模したと言われる独特の形に焼き上げたら、さらに溶かしバターをブラシで表面にたっぷりと塗り付け、グラニュー糖と粉砂糖をかけて1カ月から店によっては半年も熟成させる。そしてようやく完成! 食べる時は、乾燥させないように真ん中から切っていくのだが、そのたびにレーズンやオレンジ、レモンピールの香りが爽やかに立ち上る。どこを切ってもラム酒漬けのドライフルーツがぎっしり、しっとりとリッチな味わいが特徴だ。

Dresdner+Christstollen_©SchutzverbandDresdnerStolleneV_K.+Grottker.jpgphoto:Schutzverband Dresdner Stollen e.V. Katharina Grottker

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またドレスデンでは、1994年からアドベント期間の第2土曜日に「シュトレン祭り」が開催されている。1730年、当時この街を治めていたザクセン選帝侯アウグスト強王が、1.8tのシュトレンを振る舞ったという歴史に端を発するこのお祭り。100名ほどのドレスデンの製パンマイスターたちが集まって、何日もかけて焼き上げる4t近いシュトレンを馬車に乗せ、旧市街をパレードしていく。

2019年のものは、重さ3950kg、長さ4.1m、幅1.77m、高さは87cm。1.5tの小麦粉と200kgのアーモンド、75万個ものレーズンと1樽のラムが使われていた。ギネスブックにも載った巨大シュトレンは、最後に1434年から続くドイツ最古のクリスマス市「シュトリーツェルマルクト」に到着。大きなナイフでマイスターが切り分けて、街の人たちに配られた。


girl_©_SchutzverbandDresdnerStolleneV_Michael_Schmidt.jpg2019年のシュトレン祭りの様子。シュトレンガールと、製パンマイスターが巨大なシュトレンを切り分ける。photo:Schutzverband Dresdner Stollen e.V. Michael Schmid 

2019_©_SchutzverbandDresdnerStolleneV_Michael_Schmidt.jpgドイツ最古のクリスマス市「シュトリーツェルマルクト」の2019年のオープニングの様子。©Schutzverband Dresdner Stollen e.V. Michael Schmid 

このシュトレンを食べると来年が良い年になるといわれており、毎年楽しみにしている人も多い。真っ白な粉砂糖をかぶったシュトレンが、粉雪をかぶったバロック建築の街並みの中を歩いていく様子は圧巻だ。今年は残念ながら中止になったが、家でシュトレンを食べながら、来年のクリスマスに思いを馳せたい。

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photos et texte:HIDEKO KAWACHI

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