文/稲石千奈美(在LAカルチャーコレスポンダント)
西海岸では11月末の感謝祭を終えると、クリスマスの飾りつけが一挙に増え、街も郊外もクリスマスモードに切り替わる。夜は屋外デコレーションがライトアップされ、工夫を凝らした個人邸のクリスマスライト見学ドライブも楽しく、有名な住宅地の通りは渋滞になるほどだ。
感謝祭ディナーの後には、クリスマスプレゼントの計画にもギアが入る。というのも翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれる全国一斉のセール日で、目玉商品や大幅な割引を利用してクリスマス用のプレゼントを計画的にゲットする一大消費イベントなのだ。なにしろ、日本の歳暮、年賀、クリスマスプレゼントとお年玉を一緒にしたくらいの規模と感覚のギフト贈答が習慣になっているため、例年ギフトを贈るべき人を思いながら気合を入れてあれこれ買い揃える。子どもや愛する人に限らず、クライアントや同僚、友人、隣人、親戚、新聞・郵便配達人など結構な数になり、昨年のデータではアメリカ人一人当たりのこの時期の贈答用消費額平均は約10万円だった。最近ではブラックフライデーもオンライン化、その翌日はスモールビジネスサタデーで小さなショップを支援し、月曜はECのサイバーマンデーと続くから、ずっとショッピングすることになる。(その後の火曜日はチャリティに寄付するギビングチューズデー。物欲への罪悪感に訴える効果的なポジショニング!)
パンデミックや構造的人種差別で社会的にも経済的にも大打撃を受けている今年のLAは、感染が拡張し続ける現実に慎重に対応し、メイド・イン・LAのギフトを選んだり、地元の個人経営のショップから購入しようという動きがある。たとえば、LAのヘドリー&ベネットのマスク。機能性とデザインがレストランスタッフに絶賛されるエプロンブランドだが、医師と共同デザインしたマスクを製造、2枚組(22ドル)で買うと一枚は自動的に医療機関などに寄付される仕組みになっている。フィルター挿入もできるマスクは顔にぴったり添うデザインながら呼吸がしやすく、着け心地バツグンで、自信を持ってギフトにおすすめしたい。
ヘドリー&ベネットの人気商品ウェイクアップ&ファイトマスクが限定アーティストシリーズを始めた。第一弾はパレスティナ出身のソーシャルジャスティスアーティスト、シリエン・ダムラによるイラスト2種だ。スニーカーブランドのヴァンズもコラボしているアーティストシリーズの限定マスクは一枚22ドル。
Lot Xiは、黒人オーナーによるコミュニティ&ソーシャルコンシャスな薬局で、イングルウッドやコンプトンなど古くからLAで黒人の多く住む地区として知られてきたエリアをイメージしたキャンドルや石鹸を手作りしている。エンパワメントムーブメントにリンクするキャンドル「イングルウッド」と「コンプトンネイティブ」の売り上げは、一部が地元の学校やコミュニティサポート団体に寄付される。
地元イングルウッド学区で、メンタルサポートが必要な子どもたちに行き届いてないことを医療ソーシャルワーカーとして実感した創設者の願いが込められたキャンドル。売上げの15%が子どもたちのメンタルサポートに寄付される。ココナッツワックス製で、スイートバジルとベチバーのアロマがリラックス感を誘う。
おしゃれなメイド・イン・LAのクリスマスギフトショッピングイベントとして例年大盛況なのが、毎年12月第一週末に開催され、地元のインディデザイナーやアーティストが出店する「エコーパーククラフトフェア」。今年は残念ながら開催されないが、いつもは迷うほどたくさん素敵なギフトがある。このイベントで毎年多くのリピーターが購入していくのが、オハイのアーティストが1年間の月の満ち欠けをデザインしたMarginsのムーンカレンダー。このクリスマスギフトの定番といえるシルクスクリーンの美しいカレンダー、今年はMarginsのウェブサイトや市内のセレクトショップなどから購入が可能だ。
アーティストサイン入りのムーンカレンダー(33 x 64cm、26ドル)はシルクスクリーンの色も美しく、毎年違う色を選ぶ楽しみも。小サイズ(19 x 37cm、サインなし、20ドル)もある。photo:Margins
12月はギフトの準備でますます忙しくなるのだが、会いたい人に会えず、クリスマスパーティもない今年は、ギフトギビングをいつもより時間をかけてひとつひとつ楽しむつもりだ。
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texte : CHINAMI INAISHI