世界は愉快 春の風物詩 From コペンハーゲン デンマークの白鳥も若者も、春の門出。

世界は愉快 2021.04.16

文/冨田千恵子(在コペンハーゲンライター)

イースターを過ぎても、雪がちらつく日々が続いたコペンハーゲンだが、日照時間が長くなってきたから、遅い春の訪れをみつける散策が、近頃のコペンっ子達の週末の過ごし方だ。

210415-Langelinie-large.jpgコペンハーゲン港に面した、ランゲリニエ公園の桜も春の風物詩のひとつ。毎年4月に桜フェスティバルが開催されるが、今年はオンラインでの実施。ちなみに桜は日本のソメイヨシノで、広島に本社を置くタカキベーカリー、アンデルセン・グループがコペンハーゲン市に寄贈したもの。photo:Thomas Høyrup Christensen, Copenhagen Media Center

グリーンシティを誇るコペンハーゲンでは、徒歩で約15分圏内に公園や緑地帯などの自然に触れられる環境が整えられている。木々の新芽や花々の蕾だけでなく、水辺でデンマークの国鳥、コブ白鳥(以下、白鳥)が卵を孵化させている光景にも遭遇する。うっかり近づくと、護衛役の雄に威嚇されるから、遠くからそっと眺めるのだが、やがて数羽の雛が誕生し、一家で泳ぐ姿がみられ、微笑ましい。

210415-IMG_9636.jpgデンマーク陸軍のカステレット要塞は人気の散歩コース。水辺で見つけた白鳥の雛の姿は、アンデルセンの童話の世界のよう。photo:CHIEKO TOMITA

210415-_MG_1100-large.jpgハムレットの城として名高い、クロンボー城の白鳥たち。国鳥らしく見かける機会は多いが、特に城との組み合わせが絵になる。小さかった雛たちも、初夏には一人前だ。photo:Ty Stange, Copenhagen Media Center

この白鳥、国鳥として認識されたのは1984年。デンマーク国営放送主催の人気投票で1位を獲得したからだという。デンマーク環境省によると、60年に国際野鳥学会の会議で加盟国の国鳥決定の提案を受け、教育省が識者と協議し、全国的に生息していた「ヒバリ」とした。だが、いつしか忘れられてしまったので、改めてテレビ番組で視聴者の意見を聞くことにし、結果として「白鳥」になった。国民的童話作家アンデルセンの名作「みにくいアヒルの子」の影響かもしれないが、この決定は法的なものではなく、あくまでも、「みんなが選んだ国鳥」ということらしい。

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堅信式のセレモニー後のスナップ。この日のためのドレス選びやヘアスタイルを考えるのも楽しみのひとつ。photo:MAYA TOMITA

白鳥の雛たちはやがて巣立っていくが、同じ頃、洗礼を済ませた13歳から15歳くらいまでの男女がキリスト教信者として神に誓う儀式、堅信式(Konfirmation コンフォマション)がある。昔はこれを終えると独り立ちしたそうで、現在も大人への第一歩と考えられている。女の子は白いワンピース、男の子はスーツにタイという正装で儀式の後には高額なプレゼントが期待できる、重要なライフイベントのひとつだ。今年は、デンマーク王室の王位継承順位第2位のクリスチャン王子の堅信式の予定が発表され、例年より注目度が高い。

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2020年10月15日に15歳の誕生日を迎えた、デンマーク王室のクリスチャン王子。彼の堅信式は5月15日に予定されている。最近はモデルとしても活動しているニコライ王子が注目されているが、王位継承順位は現在2位という未来のデンマーク国王なのだ。photo:Franne Voigt

春が門出の季節なのは、世界共通。コロナ禍で制限が多いとはいえ、若い世代のたくさんの笑顔に出会えるに違いない。

texte:CHIEKO TOMITA

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