文/鄭慈卿 (在ソウルコーディネーター)
春の訪れを告げるのは世界共通で花だろう。韓国では3月中旬レンギョウの開花からスタートして、ツツジ、桜、ライラックの順に色とりどりの春の花が咲く。韓国でも花見をする風習はあるが、今年もコロナ禍で花見祭りはすべて中止になった。でも、家で楽しむ花見と親しまれるファジョン(花煎)がある。
ファジョンは、もち米の粉を練ってひと口の大きさに丸めて、春はツツジ、夏はバラ、秋は菊の花びらといった具合に季節の花を使った美しい餅。なかでも、春のツツジのファジョンがいちばんの人気で、旧暦3月3日に食べる伝統料理でもある。目で楽しんで香りで癒されるので、気分まで上がるのだ。
華やかなピンク色のビジュアルだけでもドキドキする、ツツジのファジョン。photo:park_dishes
春の食材と言えば春菜も欠かせない。山や野原が黄緑色に染まり始めると、山菜を採るおばさんたちの姿をよく見かける。市場や露店で春の山菜を小さなザルに入れて売るその姿は春の風物詩だ。韓国人が大好きなナムルにも、タラの芽、ナズナ、ヒメニラ、ヨモギ、ツルマンネングサ、セリが登場。韓国だけで採れる春菜というのも何十種類かあり、その数だけレシピも多様。和え物、炒め物、浅漬け、天ぷら、チヂミ、ビビンバなど、様々に調理され食欲をそそる。
市場には、収穫されたばかりのタラの芽などの山菜が並ぶ。photo:JA-KYUNG JUNNG
セリはチゲに入れたり、ナムルにすることも多いけど、チヂミにもぴったり!photo:park_dishes
韓国の寒い冬を耐え、新芽を息吹かせた春菜にはエネルギーの素となる栄養がたっぷり含まれてるので、疲労回復、ストレス解消、循環を助ける効果があると言われている自然からもらう大きなプレゼント。もともと五感を刺激する春菜料理は大切な韓国の食文化だが、おうちごはんがブームになったいま、料理で春を満喫する人がいつも以上に増えている。
茹でたタコとヒメニラの和え物は、疲労回復を助ける春の味。写真奥のタラの芽の天ぷらは茹でてお酢入りのコチュジャンにつけて食べるスタイルがポピュラーだが、揚げておつまみにするのもおすすめだ。photo:park_dishes

おうちでも簡単に作れるよもぎ餅のスックポムリ。
texte : JA-KYUNG JUNG




