写真・文/坂本みゆき(在イギリスライター)
イギリス人はチップスが大好きだ。ご存知な人も多いと思うがイギリスでチップスとはフライドポテトのこと。ちなみにポテトチップスはここではクリスプスと呼ばれる。
そしてイギリスのチップスは太い。セレブシェフ、ジェイミー・オリバーの「ホームメイド・チップス」のレシピを見ると、ジャガイモを指くらいの大きさにカットするとあり、BBCの料理サイトに掲載されている「これまで食べたことのないほどベストなチップス」のレシピは、太さ1cmに切るようにとの指示がある。これが定番の大きさで、それよりも細いものは「フライズ」と名称が変わる。
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スーパーの冷凍食品コーナーでは、かなりのスペースを割いてチップスとフライズの巨大な袋が並べられている。右端の品は1.7kg入りという驚きのサイズ。
衣を付けて揚げた魚(このふたつの組み合わせが「フィッシュ&チップス」)やハンバーガーとの組み合わせはもちろんのこと、どんな料理の付け合わせとなっていても不思議ではないほど、この国の民のチップスへの愛情(?)は深い。カレーに添えるのがライスではなくチップスということだって、イギリスではアリなのだ。
また、食事のシーンだけではなく、小腹が空いた時のおやつとして、クラブ帰りに夜道で頬張る夜食としてなど、あらゆる場面で登場する。さらにはチップスをパンではさんだ「チップ・バティ」なるものすら存在する。
日本の焼きそばパンに対抗する(?)炭水化物イン炭水化物の最強の組み合わせ「チップ・バティ」。「バティ」とはサンドイッチのこと。バターを塗ったパンにチップスを挟み、お好みでケチャップやソースをかけるという究極のシンプルさだ。おいしいかどうかは別として(笑)、とにかくひとつで恐ろしく満腹になることは確か。
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フィッシュ&チップスのテイクアウトのカウンターでは、チップスだけでも購入可能だ。大概はラージとスモールサイズがあり、スモールでも十分大盛りながらも値段はだいたい2ポンド程度とお手頃だ。だから学校帰りでお腹を空かせたティーンズが行列しているのをよく見かける。
注文の際には「オープンそれともクローズ?」と聞かれるが、その場で食べるならばオープン、お持ち帰りならばクローズで。おすすめは、やっぱり揚げたてを味わえるオープンだ。紙をくるりと丸めたコーン型や平たいトレーにてんこ盛りにされたチップス、それに塩とモルトビネガーをたっぷりとかけて口に運ぶ。もちろん手づかみでもいい。ちょっとくらいお行儀悪いほうが、よりおいしいのだ。
かつては古新聞で包まれていたチップスだが、衛生的ではないと現在は禁止になっている。これでスモール。2、3人分くらいの量がある。
カロリーが高くて不健康かもしれないけれども、あつあつカリカリのチップスはイギリスの国民食。元祖エナジーフードといっても過言ではないだろう。
photography & text: Miyuki Sakamoto