写真・文/河内秀子(在ベルリンライター)
「人生の半分は整理整頓」そんな言い回しが存在するドイツ。
ドイツ人には片付けや掃除が好きというイメージがあるが、首都ベルリンに住む筆者からすると、地方によって、また年代によっても大きな差があるように思われる。
ベルリンの可愛らしいゴミ箱。
ベルリンは、地区によってはマットレスやソファなどの粗大ゴミが不法放置され、その除去に年間120万ユーロもが費やされるほどだが、最もキレイ好きだと言われる南西ドイツ、シュヴァーベン地方では中世から法令で家の周囲をキレイにすることが義務付けられていた歴史から、住民が家の前の公道を掃除する風習が残っている。そして、88%のドイツ人が、掃除は日常のストレス解消になると答えている。
ベルリンの道端に落ちていた粗大ゴミで作られた、簡易休憩所?
さて、そんなドイツでは、意外にも(?)家庭用液体洗剤の詰め替えさえそこまで普及していなかったのだが、最近は小さなタブレット型の洗剤が注目を集めている。EUで2019年に採択され、今年7月からドイツでも施行された使い捨てのプラスチック製品の流通を禁止する法案によって、大きく状況が変わってきたからだ。タブレット洗剤は、使い捨てのプラスチックやポリエチレン製の容器を減らし、小さくて軽いので輸送時のCO2排出量を抑えることができるのだ。
使い方は簡単。手持ちの容器に水を入れてタブレットを溶かすだけで、窓や床の拭き掃除などマルチに使える洗剤になる。数々のドラッグストアの洗剤コーナーには、ドイツメーカーの製品がずらりと並んでいる。
まずは、2018年、ドイツで最も早くこのタブレット状洗剤の販売を開始したパイオニアブランド「BIOBAULA」。100%自然素材で生分解が可能、ドイツ国内で製造しているのでCO2排出量も少ないのが売りだ。ガラス用や風呂用など3個入りで7.69ユーロ。1個のタブレットで500〜750mlの洗剤になると考えると、既存のエコ洗剤より少しお得という印象だ。
photo: BIOBAULA
また、昨年スタートしたばかりのミュンヘン発ブランド「everdrop」は、ファッション雑誌などでも取り上げられて話題を呼んでいる。こちらはグレイッシュなパステルカラーのおしゃれなガラスボトル3本とガラス用、風呂用、キッチン用の3種類のタブレットがセットになったスターターキットが39.99ユーロ。タブレットだけなら9個入りで14.99ユーロほどだ。こちらも1個のタブレットに500mlの水を入れて作る。
photo: everdrop
ドラッグストアを中心に展開する「Blaue Helden」は、6個入りで10.99ユーロと比較的リーズナブルだが、スターターキットには再利用が可能とはいえプラスチックのスプレーボトルがセットされており「100%プラスチックフリー」の宣伝文句には少し疑問符がつく。
ドラッグストアを中心に展開する「Blaue Helden」。せっかくプラスチック容器が節約できるのに、「一生使えます!」とうたわれているが、プラスチック製のスプレーボトルとセットで販売するのはどうか……?
ちなみに、最近では同様の理由で洗剤だけでなく、歯磨き粉やシャンプーなどもタブレット型が登場。地球へのストレス軽減を実現するべく、ドラッグストアの棚にタブレットだけが並ぶ日も近いかもしれない。
昔ながらの洗剤といえば、ドイツでもクエン酸やお酢! プラスチック容器を節約できるだけでなく安価なので、手作り派の人気も上昇中。カルキ洗浄や水あか落としに愛用されている。
phtography & text: Hideko Kawachi