文/神咲子(在スウェーデンコーディネーター)
フードロス関連の社会運動は、スウェーデンでも盛んだ。スウェーデン食品庁によると、年間ひとり当たり19kgの食物が捨てられているという。レストランやカフェでは食材を余すところなく使い切ったメニューを提供したり、規格外などの理由で売れなかった農産物のみを使う店も。ホテルやスーパーは廃棄物をコンポストにして庭の土として販売したり、再利用するなど積極的だ。最近は、フードロスについて学ぶ料理教室も注目されていて、大人向けはもちろん、子ども向けのものが特に人気となっている。
子ども向けの料理教室では、農産物を生産する際に発生する温室効果ガスが環境に及ぼす影響や、必要以上の食物が生産されることでも環境に負荷を与えていることを学ぶ。そして、消費期限だけを鵜呑みにするのだけではなく、食材を自分たちの舌で実際に味わい、匂いを嗅いで確かめることの大切さも教わるのだ。
「モーセバッケ マートスチュージオ」では、昨年の秋休み期間にスーパーマーケットICAと協力し、3日間に渡りフードロスをテーマした料理教室を無料で開催した。
包丁の使い方や食材について、また味見をくりかえし塩味、酸味、甘味、苦味などの基本の味覚とそれらのバランスを覚える。photo: Mia Fallenius
先生の実演指導に、ふだんは賑やかな子どもたちも静かに聞きいっている。photo: Mia Fallenius
食のリサイクルも学びながら、何より残りもののおかずや野菜くずからおいしい料理を自分たちで作る体験こそ、知識も増え、実用的で楽しい料理教室ならではの醍醐味だ。
「2週間経って少し酸っぱくなった生クリームはサワークリームとして活用できるのよ」「黒ずんだバナナは捨てないで冷凍庫に入れてその後でスムージーやアイスに!」「野菜がしなってるからといってその日に腐るわけじゃないの。だから、早めに使い切るのもコツだよね」と先生が教えている時、子どもたちは真剣に耳を傾ける。そして、目を輝かせてフードロス解消レシピに挑戦する姿を見ていると、食育の大切さを痛感するとともに、未来もまだまだ捨てたものではないと思えてくるのだ。
余った食材で簡単に作ることができるカポナータが完成! photo: Mia Fallenius
Text: Sakiko Jin