写真・文/甲斐美也子(在香港ジャーナリスト、編集者、コーディネーター)
2021年8月、「18カ月後をめどに、政府指定ゴミ袋を購入する形式で、ゴミ分別と廃棄有料化を導入」との香港政府からの発表が行われた。そう聞くと海外の方は「いままでは違ったの?」という感想を持たれるのではないだろうか。
実は香港でのゴミ廃棄政策は、正直言って著しく遅れている。分別も焼却もなく、基本的にほぼ100%埋め立て地への廃棄。集合住宅であれば、いつでもゴミ出しが可能で、粗大ゴミは地域のゴミ収集所に持ち込めば無料でいくらでも捨てられるほど。
廃棄される食糧も毎日3,565トンが埋め立て地行きとなり、そのうちリサイクルされるのはわずか2%。そのうち飲食店などの商業施設から出るものが2007年には25%を占め、現在は35%に悪化している。
「出てしまったフードロスのリサイクルを考えることはもちろん大切だけれども、狭い香港の場合は、最初からロスが出ないように徹底的に対策を執り、ロスを減らすことが最重要です」と断言するのが、ラグジュアリーな5ツ星ホテル、ザ ランドマーク マンダリン オリエンタル香港広報部長のグラディス・ヨンさん。
「当ホテルでは毎日のゴミ量を記録し、月ごとにまとめて、翌月のゴミ削減対策に役立てています。また、2020年にアジアのトップレストラン50 サステナブル・レストラン・アワードを受賞した当ホテルを代表するレストランAmberでは、無酸素ゴミ処理機を導入し、年間24.67%のゴミ削減を達成しています」
それでも出てしまうフードロスについては、ザ ランドマーク マンダリン オリエンタル香港を含む多数の飲食施設や食品店から、毎週35トンの食品がチャリティ団体のFood Angel(惜食堂)に寄付され、毎日15,000食以上の食事となって、援助を必要とする人たちに配布られているという。
信頼できる生産者から仕入れる野菜は、調理法を工夫して、皮から芯まで無駄なく使用している。photo: The Landmark Mandarin Oriental, Hong Kong
「ゴミ削減を日々のルーティンに組み込むことが重要で、たとえばホテル全体で大量に発生する使用済みの調理用油は、廃棄油の再利用処理を行う工場との提携により、毎月345kg分の船舶燃料に転換されているんですよ」
ビクトリア・ハーバーを往来する大小船舶の姿は、香港の代名詞ともいえる風景である。その原動力が、美食のキッチンから来ているというのも、食の都らしい一面だ。
フェリー、漁船、遊覧船、コンテナ船などあらゆる船舶が行き来するビクトリア・ハーバー。
photography & text: Miyako Kai