冬の楽しみ編 from スウェーデン スウェーデン人も期間限定に弱い? 冬の2大フィーカ菓子。

世界は愉快 2021.11.21

写真・文/神咲子(在スウェーデンコーディネーター)

「期間限定」に弱いのは日本人だけには限らずスウェーデン人も同じだ。しかもそれがこれから突入する暗く長い北欧の冬を乗り越えるためのものなら特に。今回は、スウェーデンの期間限定の2大フィーカ菓子、「Lussekatt(ルッセキャット)」と「Semla(セムラ)」を紹介する。

211119-stock-01.jpgルッセキャット。もとはドイツが発祥とも言われ、なぜツイストしたSの形になったのか未だに不明だ。レーズンありなしあるが、レーズン以外のものが飾りになることはない。

サフランで黄金色に焼き上げられたルッセキャットは、降臨節の日(11月の最後の週の日曜日)から聖ルチア祭の日(12月13日)、そしてクリスマスまでの間に食されるシナモンロールならぬサフランロール。言い伝えによると、ネコに扮した悪魔が子どもたちに悪さをしないようにと、キリストが自ら子どもに扮してルッセキャットをみなに分け与えたという。その際、光を嫌う悪魔に対抗するため金色に焼き上がるサフランを練り込んだとも。それゆえ「Saffran bulle (サフランブッレ)」という別名もある。

211119-stock-02.jpgこちらは、サフランレングド。ルッセキャットの別スタイルだが、基本は同じコンセプトのサフランの焼菓子だ。photo: Frederic Piccoli
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もうひとつの菓子パン、セムラは、イースター前の7週間に渡る断食中に食べる、これでもかのハイカロリーなスイーツ。バンズの上を切り取り、中をくり抜いてアーモンドペーストを詰め、その上にたっぷりの生クリームをトッピング。切り取ったバンズを蓋に戻したら完成だ。

211119-stock-03.jpgこちらのセムラはかなりモダンで、アーモンドペーストの中にローストして粗挽きしたアーモンドがイン。さらに、オレンジの風味をバンズに沁み込ませたこだわりの逸品。こぼれそうでこぼれない抜群の生クリームのフォームで、超おいしかった!! photo: Frederic Piccoli

セムラは年々人気を増すばかりで、以前は毎年2月中だけ販売されていたのに、最近ではクリスマス前からチラホラ出回り、長ければ3月いっぱいまで購入することができる。期間限定のありがたみが薄れるのではないかという心配もよそに、「セムラップ」や「セムラバーガー」などさまざまなバージョンのセムラ競争が激化している。結局は、クラッシックなセムラの王座は揺るがず何よりだが。

 

ストックホルムにある老舗Tössebagerietのセムラの数々。悪魔をも引き寄せそうな黒い「リコリッシュセムラ」と大ブームを起こした「セムラップ」。

セムラもルッセキャットも、もともとは断食を乗り越えるためのお腹にも溜まる食べ物だ。大昔の貧乏なスウェーデンでは、唯一の贅沢だったに違いない小麦粉を使ったパンが起源で、サフランや生クリーム、アーモンドペーストなどのフィリングは1600年代以降に使われるようになったといわれている。

当時の用途とは変わり、いまやセムラとルッセキャットはスウェーデン人にとって、終日暗い冬の日々を乗り越えるための大事なお楽しみなのだ。北のキルナ地方では、1月となれば日が昇るのが11時32分、日が沈むのは11時53分と、日照時間はわずか21分! ストックホルムは若干南に位置するためまだ日は長いが、8時44分に日が昇り、約6時間後の午後3時にはさようなら。それも燦々と輝く太陽ではなくほとんど曇り状態……。これではフィーカして、セムラとルッセキャットでも食べなきゃやっていられない雰囲気なのだ。

ちなみに、スウェーデンのコーヒータイム、お茶のひとときであるフィーカ自体には決まりがない。まず朝起きていちばんにフィーカ、仕事や学校についてひと息フィーカ、ランチ後に食後のフィーカ、そしてアフタンヌーンティーならぬ、アフタヌーンフィーカ……と果てしない。フィーカは期間限定ではないが、それでもセムラやルッセキャットをおともに、お茶やコーヒーの湯気を感じながら、ぬくぬくと冬の寒さをも楽しむのだ。

いろいろ試してみたけれど、私はやはりクラッシックなセムラに釘付け!

photography & text: Sakiko Jin

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