今年も残すところあとわずか。2021年のイギリスは、年明けは早々にロックダウンとなるスタートだった。その後は一時的に落ち着いた時期もあったけれども現在はまた心配が高まって、多くの人々はできる限りいつも通りの日常生活を送ろうと努めながらも、どこかに不安をかかえているというのが正直なところだと思う。
そんななか国内に活力を吹き込むかのように、英国ファッション協会は2年ぶりにロイヤル・アルバート・ホールで「ザ・ファッション・アワード 2021」の授賞式を開催した。
その年を締めくくるファッションのビッグイベント「ザ・ファッション・アワード」。国内外から多くのファッショニスタとセレブリティを集めて盛大に行われた。photo: Fashion Awards 2021 (Bertie Watson, British Fashion Council)
突出したデザインで業界に強いインパクトを与え、世界的にトレンドをリードしたデザイナーに贈られる最高賞「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」はキム・ジョーンズの手中へ。プラダのミウッチャ・プラダ&ラフ・シモンズや、ジェイ ダブリュー アンダーソンとロエベを手がけるジョナサン・アンダーソンらを抑えての栄えある受賞となった。
キム・ジョーンズ(写真中央)。プレゼンターを務めたシンクロナイズドダイビング10m高飛び込みの金メダリスト、トム・デイリーと女優デミ・ムーアとともに。photo: Fashion Awards 2021 (Bertie Watson, British Fashion Council)
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キム・ジョーンズは2002年にファッションの名門校ロンドンのセントラル・セント・マーチン美術大学のメンズウェア修士課程を卒業。翌年に自らの名前を冠したブランドでデビューした。2018年にはディオールのメンズ アーティスティック ディレクターに就任。さらに2020年9月にはカール・ラガーフェルドの後任として、フェンディのウィメンズにおけるアーティスティック・ディレクターも兼任することに。ファーストコレクションとなった今季は、彼を取り囲む才能と自信にあふれた女性たちに捧げられていて、大胆でエレガント、そしてパワーに満ち溢れている。
またこの冬は、ロンドンの高級ホテル、クラリッジスのクリスマスツリーのデザインでも話題に。クラリッジスは毎年、特に注目を集めたクリエイターにツリーを依頼しており、過去にはジョン・ガリアーノ、アルベール・エルバス、クリストファー・ベイリー、クリスチャン・ルブタンンらが手がけている。
スノードームにインスピレーションを得たというキムのツリーは、最新鋭のホログラフィックプロジェクターによる投影が、ディオール・オートクチュールのシグネチャーといえるテキスタイル、トワルを通してホテルロビー全体に映し出されるというもの。周辺をキラキラと照らし、幻想的でドラマティックだ。
そして、この6.5mのツリーのてっぺんには、かつてムッシュ・ディオールが幸運のお守りとしてアトリエに飾っていたという星のオブジェを抱きしめたキムの愛犬クッキーのモチーフも。
ツリーのデザイン画にもムッシュ・ディオールとクッキーの姿が書き込まれていて何とも微笑ましい。
キムの手がけるデザインは、人々を勇気付けながら明るく照らし、希望とともに来年へと導いてくれているようだ。

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。