アリス・ウィリアムスは大学で若者とコミュニティ支援について学んだのち、タイで厳しい状況下の女性たちをサポートする仕事を経て、2014年にロンドンで社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)ルミナリーを立ち上げた。タイ同様にイギリスでもドメスティックバイオレンスやホームレスなどに苦しみ、そのために経済的に自立できない女性たちが非常に多くいると気付いたからだ。そのなかでも特に熾烈な環境にいる女性たちが、暮らしを立て直して未来へ目を向けられるように支援している。
ルミナリー設立者のアリス・ウィリアムス。
---fadeinpager---
「貧困や差別、バイオレンス下にある女性たちに出会った経験が「ルミナリー」を始めたきっかけでした。暴力の元で生活している女性たちは、コミュニティに属することなく孤立してしまいがちです。コミュニティこそ、私たちがもっとも大切にしている事柄です。困難から抜け出すためには支え合うことは不可欠だから」とアリス。
その言葉の通り、助け合いながら強いネットワークを築くことを念頭に、精神的安定のためのワークショップやセラピーとともに、6カ月に渡る職業訓練のコースを提供。そこでは仕事のスキルだけではなく、タイムマネージメントやストレスマネージメントなども行う。2020年には53人の女性たちがこのコースを受講した。
ルミナリー・ベイカリーは、そんなルミナリーのプログラムを終えた多くの女性たちが実習を詰み、自信をつけてその後の仕事に繋げていくことができるよう、足がかりとなる場だ。
---fadeinpager---
パンやケーキの販売とともに、カフェスペースも併設。丁寧に入れたコーヒーとともに、焼きたてのパンやペイストリーが楽しめる。テイクアウトももちろんOK。
ロンドンのハックニーとカムデンタウンに2店舗あり、どちらもクリーンでモダンなインテリアの素敵な空間だ。アリス、そして支援されている女性たちへのサポートのためというのはもちろんながら、シンプルに通いたいと思わせる快適さに満ちている。
---fadeinpager---
ロンドンでは熟練した職人たちの手によるパンやケーキの店が増え続けている。それらと肩を並べる味と評判だ。
---fadeinpager---
ウェディングやバースデーのための、セレブレーションケーキも人気の商品だ。
洗練されたデコレーションが目を引くセレブレーションケーキ。ヴィクトリア・スポンジ、スティッキー・トフィーなどの定番のフレーバーから、レモン&ブルーベリー、オレンジ、カルダモン&ピスタチオのオリジナルも揃える。
ここを「卒業」後、自分のビジネスをスタートした人は過去に13人もいるという。女性たちの可能性を信じ、サポートをしてその才能を開花させていくアリス、そしてルミナリー。厳しい時代のいま、人々の心のなかに暖かな灯りを灯してくれるような存在だ。
text: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。