サステイナビリティに対する意識が高まる中、リサイクルすることはどの分野でも確実に定着しつつあるが、2022年1月にさらなるリサイクルを実施するブランドが登場した。使い古した下着をリサイクルする、ニューヨーク発の下着ブランドのパレードだ。
このアイデアは画期的! とアメリカの各メディアで話題になっているが、発起人は同社の共同設立者でCEO、クリエイティブ・ディレクターのカミ・テジェスだ。弱冠24歳のZ世代の起業家が注目を集めている。
過剰な性的アピールは避けて、消費者が自身の身体を大切に思うことがブランドの狙いと話すカミ・テジェス。スタートアップ界の新生として、注目を集めている存在だ。photo: Sonia Portaluppi
リサイクルの仕組みは簡単。いまのところアメリカ国内のみだが、同社のウェブサイトから、リサイクル用のパッケージをオーダー(無料)すれば、自宅に届く。その袋に洗濯済みのいらなくなった下着を詰めて送り返せばいいだけ。もちろん使い古しの下着はどのブランドでもどんなスタイルでも構わない。革新的なリサイクルを運営するテラサイクル社とのパートナーシップにより、古い下着は再利用されて、寝具などに生まれ変わる。
これまで、私もいらなくなった洋服は古着屋へ持ち込んだり、古くなったTシャツなどは雑巾としても使っていたが、パンツを再利用する場面はほとんどなかったからうれしい。
カミはコロンビアからの移民2世で、ニュージャージー州のプリンストンで育つ。ティーンの頃、ショッピングモールの下着店にディスプレイされているセクシーなランジェリーを纏ったスーパーモデルのポスターを見ては、自分にこれは似合わない、自分は不十分であると感じていたという。
企業が打ち出す一方的で表面的なセクシーさに嫌気がさした彼女は、コロンビア大学在学中の2019年にパレードを設立し、大学は中退。当初はオンラインのみの展開だったがブランドは急成長を遂げ、現在はソーホーに旗艦店を構えている。Z世代によるZ世代のためのマーケティングも功を成している。
会社を設立した時には、インスタグラムで女性とノンバイナリーを称する6000人以上に無料のサンプルをオファーするとアプローチした。またタトゥーがたくさん入っていたり、ストレッチマークのあるモデルを起用。サイズもXSから3XLまで揃え、多様性をアピールした。その結果、スーパーモデルのカーリー・クロスや、歌手のシャキーラもパレードに出資したのだ。
デザインはカラフルで、シンプル。それまで主流であった従来のセクシーさとは一線を画している。寄せてあげるワイヤーやパッド入りのブラジャーではなく、ノンワイヤーのブラレットを展開。通気性がよく手触りのいいリサイクルされたファブリックを使用し、サステイナブルで、身体と環境にいいことをスローガンにしている。また木材繊維である木材パルプを使用して生産されたスーパーソフトシリーズは、木々に恩返しすべく、売り上げごとに植林される仕組みだ。
若い世代にとっては、細いスーパーモデルがまるで男性を誘惑するように、過剰にセクシーさをアピールした下着よりも、サステイナブルで、消費者をギルトフリーにしてくれるブランドの方が身近に感じるはずだ。アメリカのアンダーウエア業界の歴史を塗り替えようとしているカミに期待したい。
2月にリリースされた最新コレクション「ウィンターブルーム」は、フローリストのブリタニー・アッシュとのコラボレーション。ブラレット36ドル photo: Taylor Osumi
フローラル柄のパープルのブラレットとトングのマッチングセット46ドル photo: Taylor Osumi
若々しい印象で、スポーティなデザインのマッチングセット(38ドル)は、メッシュ素材を採用。photo: Taylor Osumi
リサイクルされた糸を使用して生産された、非常にソフトな触り心地のトング。各11ドル photo: Taylor Osumi
text: Azumi Hasegawa