大人の習い事 from ニューヨーク ニューヨークの出会いの場ドリンク・アンド・ドローって?

世界は愉快 2022.03.18

長谷川安曇

学生の頃、美術の授業が好きだった。決して絵がうまいわけでも、美大に行ったわけでもないが、絵を描くのは好きだった。アートが好きで美術館やギャラリーにも頻繁に訪れるし、いまでもたまに気がむくと描く。でも絵画教室は敷居が高い……。これは私自身のことだが、同じような気持ちの人はたくさん存在するのではないだろうか。

ニューヨークには「ドリンク・アンド・ドロー(drink and draw)」と呼ばれる、お酒を飲みながら写生をできるクラスが多く存在する。ドリンク・アンド・ドロー自体は、アメリカ全土に普及しているカルチャーだが、アートのコミュニティが多く存在するニューヨークではより盛んだ。特に人気なのは、ウィリアムズバーグ地区のコワーキングスペース、バットハウスで毎週水曜日の夜に開催されているクラス。入り口で参加費の20ドルを支払いワクチン接種証明証と身分証明書を提示すれば、誰でも参加できる。私のようにビールが好きで時々絵が描きたくなる人にぴったりの、肩肘の張らないスペースだ。

DND1.jpg平日はコワーキングスペースとして営業するバットハウス。水曜日の20時から22時30分までは「Drink N' Draw」を開催する。週末はイベント会場としてロケーションを提供している。Courtesy of Drink N' Draw

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Courtesy of Drink N' Draw

パンデミックの前は一度に200人が訪れるほどの大人気スポットだったが、現在では規模を縮小して40〜50人ほどが参加している。部屋の中央に座る裸婦をみんなでドローウィングする。画材とスケッチブックは各自持参だが、画用紙や画材も教室が提供してくれるので、何も持っていなくても大丈夫だ。

そしてこのクラスの醍醐味は「ブルックリンラガー」のビールが飲み放題(!)ということ。ブルックリンラガーはブルックリンを中心に、アート関連のコミュニティをスポンサーすることで有名だ。

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センスのよいBGMも好評。講師はいるが特に描き方を教えることはなく、参加者が自由自在に解釈してドローウィングを楽しむ。Courtesy of Drink N' Draw

写生の仕方もさまざまでクレヨンや水彩絵の具でカラフルに描く人もいれば、木炭鉛筆でデッサンする人、iPadを使う人などみんな自分なりの描き方で楽しんでいる。セッションの間はみんな集中しているが雰囲気はカジュアル。クラスが終わった後は周囲の人と自然と会話が生まれ、出会いの場にもなっているという。ここで出会って結婚するカップルは決して少なくない。2021年には、同クラスで出会ったふたりの結婚式の会場としてバットハウスが使われたという。またデートの場としてカップルで参加する人もいる。

「2013年にオープンしてから、純粋に楽しいアートの場を提供するという姿勢で取り組んできました。ニューヨークは会員制のクラブや社交クラブが多く存在して、誰もかれもが気軽に参加出来る場所が少ない。ここでは絵の得手不得手関係なく、誰でも気軽に来てほしい。自由に描いて時間を楽しんでもらえれば」と講師で自身もアーティストであるジョエル・モリソンさん。描けて飲める、(もしかしたら素敵な出会いもある)ニューヨークならではのスポットなのだ。

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ブルックリンに住むアーティストやグラフィックデザイナー、イラストレーターなどが多いそう。時にハリウッド女優が訪れたり、著名なイラストレーターも参加する。Courtesy of Drink N' Draw

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Courtesy of Drink N' Draw

text: Azumi Hasegawa

長谷川安曇

東京出身、2004年からニューヨーク在住。フリーのライターとして活動しながら、映像制作にも携わり、キャンペーンやミュージックビデオのプロデュースとフィルムメーカーとしても活動する。www.azumihasegawa.com

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