いま注目のローカルエリア from ロサンゼルス ヒーリング伝統のある田舎で、移住組が始めた新しいコト。

世界は愉快 2022.08.09

稲石千奈美

昔から芸術家や哲学者などの知識人、スピリチュアルな指導者や自然愛好家を魅了してきた田舎町オーハイ。LAから車で1時間ほどで到着するこの地域は、なだらかな丘陵が囲むヴァレーに個人経営の素朴な農場や柑橘果樹園が点在し、オレンジやレモンの花が満開になる季節にはエリア全体が芳香豊かな空気で包まれる。ハイウェイを下りて、古い樫の大木がトンネルをつくる道を馬や自転車と併走しながら運転する非日常感もいい。

LAから日帰りのドライブや小旅行、スピリチュアルリトリートなどの観光地としても愛されてきたオーハイ。このエリアならではの特別なエナジーを感じる自然のほかにも、天然温泉や10万冊以上の古本が並ぶ青空書店、毎夏恒例のミュージックフェスなどの楽しみがある。しかし、オーハイの不文律なモットーは「何もすることがないけれど、時間が足りない」。だから自然に身を委ねて、ゆっくりとした時間を過ごすのがオーハイの本来の魅力なのかもしれない。

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オーハイヴァレーを見渡す友人宅。連休中は誰も計画を立てず、ただただのんびりと過ごす。

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子どもたちもアーティチョークなどが咲き乱れる庭を探索したり、鶏を追いかけたり。

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地元名所でもある老舗のバーツブックスは蔵書が13万冊を超える書店。レア本を含む古本が主力だが新書もある。古い家屋と中庭などを敷地いっぱい利用した外と内の境がない店舗の作りは、青空とそよ風が心地よく、何時間でも過ごせる。photography: Bart’s Books https://bartsbooksojai.com/

特別おいしいものやおしゃれなホテルがなくても長年静かな人気を誇るオーハイだが、数年前からLAの知人、ことにクリエイターの間でオーハイへ引っ越す人が目立つようになった。聞けば、マジカルな自然&居住環境とLAへの距離感のバランスのよさが主な理由らしい。そうした移住組にはLAでのビジネスをキープしながらオーハイに住む人も多いし、地元で起業する人も続出中だ。移住と起業の傾向はパンデミックで一層高まり、最近ではLAの主力メディアが「LAの半分がオーハイに移住中」と大袈裟に報道したほどだ。

新しいオーハイの観光地特に話題となっているのが、ホテルとレストラン。

いままでのオーハイは宿泊施設の少ない町だったけれど、近年では既存のモーテルを買い取って、ゲストを満足させるモダンなデザインにリニューアルしたり、キャンピングカーを改装して宿泊施設として提供するなどユニークな「泊まりたい宿」が人気だ。

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オーハイの新たなホテルクイーンとも呼ばれるケニー・オセハン率いるシェルターソーシャルクラブはすでに地元の古いモーテル二軒を改装して経営中。オーハイランチョインとカプリホテルともにデザインや客層が人気で、予約が困難なほど。Ojai Rancho Inn Capri Hotel photography: Fancy Free Photography

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オーハイランチョインの受付と部屋。先住民のチューマシュ族から着想を得た自然モチーフのデザイン。photography: Yoshihiro Makino

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オーハイランチョインの敷地内にはキャンプファイヤーやハンモックのある広い庭、プール、地元の人々も通うバーがある。photography: Yoshihiro Makino

一方、レストランシーンはLAやSFの有名店で経験を積んだ若手シェフや起業に賛同するベテランシェフらがタッグを組んで、フードコミュニティをつくり、レストラン、カフェ、バー、パン屋などが続々オープンしている。グルメもオーハイの旅の目的と、地元を活性化するエキサイティングな展開が勢いづいている。パンデミックをきっかけにオープンしたレストランThe Dutchessはカリフォルニアxビルマという珍しい組み合わせの料理が人気。レストランとカフェ、地元のパンとケーキを一躍レベルアップさせたベイカリーを兼ね、連日7時半から21時半まで営業しているから気軽に立ち寄れるが、レストランは予約したほうがいい。LAからオーハイに引っ越してきたシェフやパティシェがパートナーになった店だ。

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ダッチェスのモダンでユニークな料理はオーハイに旅をしたい目的のひとつに。地元農家の野菜の旨味を一緒に味わうタンドリーチキン、沿道でも見かけるペッパーツリーをあしらったパッションフルーツラッシーのパイ、オーハイ名物の柑橘類を使ったカクテルなど季節を感じさせる。ビルマ料理特有の発酵茶葉のサラダもおすすめ。photography: Elise Freimuth

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人気のレストランやベイカリー数店をLAで経営するベテランシェフのゾエ・ネイサン(左)は自然に囲まれてゆっくりとした生活をするつもりで家族と一緒にオーハイに引っ越したが、この地でもレストランを開店することに。ビルマ出身のソー・ナイン(右)をエグゼキュティブシェフに、ベイカーのケルシー・ボリトをパティシェに迎え、彼らもパートナーとなって実現したレストランはチームワークの賜物、新しいオーハイの象徴だ。photography: Mariana Schulze

エリアの注目度に伴い、レストラン、そして宿泊施設も予約が取りづらくなっているため、新しいオーハイを存分に堪能するのは早めに計画立てることが、おすすすめ。思いついた時にのんびりを楽しみにいくオーハイが変わっていくのは少し寂しいけれど、ヒーリングパワーのある土地だから、きっと新旧の良さがバランスよく共存していく美しい町であり続けると信じている。

Ojai Rancho Inn
615 W. Ojai Avenue, Ojai  CA 93023  tel. +1 805.646.1434
https://www.ojairanchoinn.com/

Capri Hotel
1180 E. Ojai Avenue, Ojai  CA 93023  tel +1 805.646.4305
https://www.caprihotelojai.com/

The Dutchess
457 E. Ojai Avenue, Ojai, CA 93023tel +1 805.640.7987
www.thedutchessojai.com

 

text:Chinami Inaishi

稲石千奈美

在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。

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