かつては天ぷらや寿司、近年ではカツカレーや餃子など。イギリスで大人気となって日本での名がそのまま英名の食べ物は数知れず。その最新そして最旬は何と言ってもSHOKUPANこと食パンだろう。
その立役者は西ロンドンにあるHappy Sky Bakery(ハッピー・スカイ・ベーカリー)だ。
店頭には、食パンとともに日本のお惣菜パンや菓子パンも並ぶ。故エリザベス女王のロイヤルワラントにあやかったライオンとユニコーンがいるお店のシンボルも可愛い。
「Happy Sky Bakeryをスタートした2007年からSHOKUPANを作っていたのですが、その当時のお客様は日本人がほとんどでした。2016年に実店舗を開いた頃からは日本に旅行したことがある方を中心にイギリスの人々にも少しづつ受け入れられるようになったのですが、2020年に入ってから一気に一般家庭まで広まったという実感があります」とHappy Sky Bakeryのオーナーの樋田もとこは語る。
明るい笑顔が素敵なオーナーの樋田もとこ。
そのきっかけはテレビのグルメ番組。セレブリティシェフのPaul Hollywood(ポール・ハリウッド)が日本を訪れて美味しいものを食べまくる『Paul Hollywood Eats Japan』で、ポールが日本のSHOKUPANの味とテクスチャーを絶賛。認知度が一気にあがり、Happy Sky BakeryにもSHOKUPANを求めてやってくる人が激増したそう。
Happy Sky Bakeryの食パンはTokyo Milk Loaf(東京 ミルク ローフ)と呼ばれ、粉の一部を90度の高温で練る湯だねで作る看板商品だ。72時間長期低温発酵することで粉の甘みを最大限引き出し、モチモチふわふわに仕上げる。さらには柔らかくしっとりした食感を引き出すためにケーキのようにターンオーブンで焼き上げているという。美味しくないわけがない。
Happy Sky BakeryのSHOKUPAN、Tokyo Milk Loaf。
お店のモットーはHonest Baking, Healthy Life。商品の原料となるものもサステナブルなものづくりやローマイレージを心がけている会社から仕入れている。Tokyo Milk Loafの材料のひとつ、Wright's BrothersのLondon Ground Strong White Flour(ロンドン グランド ストロング ホワイト フラワー)はロンドンで育てて製粉した強力粉だ。
そしてSHOKUPANを使った日本風サンドイッチはSANDOと呼ばれ、SHOKUPANと連動で大人気だ。
「従来のイギリスのスーパーで売っている食パンとブリオッシュの中間に位置するSHOKUPANは、いままでになかった新しい商品として話題となりました。そんなSHOKUPANで作るフルーツサンドや色とりどりのフィリングをたくさん詰め込んだわんぱくサンドはビジュアル的にインパクトがあり、インスタ映えしたことがSANDO人気の大きなきっかけだと思います」(樋田)
フルーツと生クリームがフィリングのフルーツサンドはこれまでイギリスには存在せず。ケーキのスポンジさながらのSHOKUPANだからこその美味しさがイギリスの人々の心を掴んだ。
サンドイッチショップSeceret Sandwich Shopは、Happy Sky BakeryのさまざまなSHOKUPANでわんぱくサンドを作る。カラフルなフィリングが食欲をそそる。
現在、Happy Sky Bakeryはロンドンのレストランやホテル、カフェ、会員制クラブから、テイクアウト専門のカジュアルなお店までの30以上の場所にSHOKUPANを卸していて、ロンドンのSHOKUPANを一手に引き受けている。そのほとんどが唐揚げサンドやフルーツサンド、わんぱくサンドなどのSANDOに使われているという。
もちろんカツサンドも大人気。
Happy Sky Bakeryのカツサンド。中のカツもパン同様にふわふわで滋味にあふれている。
「カツカレーブームでパン粉を付けて揚げたカツ(宗教上の理由から豚ではなくチキン使用のカツが主流)の美味しさはイギリス中に広く知られていたので、カツサンド人気にもあっという間に火が点きました。カツサンドからSHOKUPANを知り、ファンになった人も少なくありません」。
Happy Sky Bakeryのカツサンドは、中に挟まれたカツもTokyo Milk Loafに負けないくらい繊細でしっとりとした食感の絶品SANDOだ。長年のイギリス暮らしで忘れていた日本の味を思い出させてくれる。いや、もしかしたら日本で食べるカツサンドよりも美味しいかもしれない。
text: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。